4月22日、23日、一般社団法人エステティック・グランプリ(東京都八王子市、榎戸淳一理事長)は「第4回エステティックグランプリ(以下、エスグラ)」を神奈川県横浜市で開催した。エスグラは、全国のエスグラエントリーサロンから最優秀サロンを決定するグランプリだが、日本一を決めること自体を目的とせず、エステ従事者たちがグランプリ出場権をかけて切磋琢磨することによって業界の質を向上させていくことを目指している。今年は全国の724サロンが目的に賛同しエントリーした。今回はそのなかから「フェイシャル技術部門」と「モデルサロンプレゼンテーション部門」の最終選考にそれぞれ選ばれた3サロンが施術やプレゼンを披露しあった、23日の「グランプリファイナル」について紹介する。
<理想とする未来は待っていても訪れない>
エスグラは、エステティシャンが主役になるステージを提供し、エステティシャンたちが夢や誇りを持って働けるような業界にしたいという願いを持つ7人の有志が2010年に立ち上げたものだ。発足当時、法律、クレジットや信販の問題などで業界イメージが悪化し、エステティシャンの離職率の高さも問題となっていた。「このままでは業界自体がどうなるかわからない」という危機感から解決策を模索した結果、エステティックという仕事が「おもてなしの最高峰」として認識されることを目指すこととなった。エステティシャン自身が「共に学び、共に成長し、共に輝く」ことを理念とし、スローガンに、「夢や誇りを持ったエステシャンが日本を美しくする」、ビジョンに「エステティック業界を尊敬される業界にする!」を掲げている。
第4回を迎えた14年4月現在、理事・実行委員は157名に増え、グランプリに約5,000名の観客を集めるまでに成長した。それでも「まだまだ認知度が足りない」と実行委員たちは考えている。「今後、業界はどうなるのか」という懸念は、今でも実行委員たちの胸中にある。とくに昨今は、エステティシャンになりたいという若者の減少に危機感を覚えているという。
そこで、第4回エスグラのテーマを「未来」とし、1年かけて準備を進めた。若者という未来の担い手を求めるために、あらためて、エステ業界の未来を真剣に見つめようとしたのだ。「未来」は発足当初から、「理想とする未来は待っていても訪れず、自分たちでつくっていかなくてはならない。自分たちの業界は自分たちで良くしていくのだ」という切実な思いに導かれ、活動を続けてきた実行委員たちが常に念頭においていたものでもあった。今までも、エステ業界の未来のために、全国を北海道、東北、関東・甲信越、中部・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄のまで7つの支部に分け、ほぼ毎月、いずれかの支部で技術やサロン運営、法律問題などの勉強会を開催。平行して支部ごとにグランプリ選考のためのサロン審査を行なった。審査内容は、エステの専門家から一般客まで幅広い立場の人たちから選ばれた審査員が、エントリーサロンを年3回にわたって覆面調査し、100の評価項目をチェックするというもの。専門技術などに顧客満足度からの評価を加え、審査内容はグランプリ会場やパンフレットで公表した。
<「健康長寿社会」に寄与する産業としての期待>
第4回エスグラの準備期間中にあたる13年6月、「日本再興戦略」の成長分野のひとつとして「健康寿命延伸産業」が掲げられた。12月には経産省商務情報政策局ヘルスケア産業課係長の山崎牧子氏が美容・エステの専門情報誌「クレアボーNo.77」に「健康長寿社会におけるエステティックへの期待」を寄稿。記事のなかで「14年は健康寿命延伸産業への参入可能性が高い重要な産業としてエステティック業の注目も高まることも予想されます。エステティック産業の提供する『健康』、『美』、『癒し』に貢献するサービスの重要性は、より一層その役割が大きくなるものと期待しております」と記した。
この期待はエスグラに活力を与えた。グランプリ冒頭、開会宣言を行なった小林光子エスグラ実行委員も、話のなかでエステ業界が健康長寿社会に寄与することへの期待を込めた。
小林氏は、前回第3回エスグラの準備期間中に悪性リンパ腫に罹った。病院に行く以外に一歩も外に出られないという状況のなかで、皮膚が黒くなり髪は抜け落ち、「回復しても美容の世界に戻ることができないのではないか」というストレスと戦い続ける日々に耐え抜いた。その闘病生活から復帰し登壇を果した小林氏は「病院は、病気になったら行くところ、しかしエステは病気に罹った人を癒し、自信を与えてくれるところ。そして病気を事前に防ぐためのお手伝いができるところでもある」という認識を闘病生活から体得したと語った。そして、エステの存在に自らの命を助けられた存在として、エステが人々に貢献できる力を信じる1人のエステティシャンとして、「日本とエステの未来が素晴らしいものになるように」と、開会宣言を行なった。
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