水商売で「ぼったくり」と、一概に言うのは難しい。価格表示が明確にされていないというのは別だが、たとえ100円でもその価値に見合わないと客が思えば、その客にとっては「ぼったくり」となってしまう。逆に言えば、どんなに高額でも相応の評価が得られれば良いのだ。
　たとえば、小生にとって、たいして旨くもない、いや、どちらかというと不味いラーメンセット（ラーメン、餃子８個、たくあん２枚付き小ご飯）が1,200円となれば、個人的には「ぼったくり」と思う。

　そもそも酒屋で1,000円前後のボトルを5,000円以上で出していることだけを切り取って考えれば、「ぼったくり」だ。ただし、その差には、接客サービス分も含まれている。水商売は常に「ぼったくり」と紙一重。極論、万人に「ぼったくり」と思われない店はないのではないだろうか。片や、ホストのシャンパンタワーには、その価値を見出して満面の笑顔でオーダーする方もいるのである。

　しかし、かつては、万人にとって明らかな「ぼったくり」が跋扈していた。中洲の話ではないが、小生は若かりし頃、『ポッキー１本1,000円』という瞬間的に凄まじいインフレが起きたと思えるほどの被害に遭った。朝まで飲んで、へべれけになった小生に、強面のマスターが突き出した伝票には、ポッキー36本、チョコ23個、キャンデー13個と詳細な内訳があり、最後にアルコールを一気に吹き飛ばす合計金額が記されていた。ちなみに、都度コインを入れていたカラオケだけは１曲200円と良心的。

　「少し現場をのぞいてみませんか？」。ぼったくりの話題で盛り上がっていると、中洲の事情通が誘ってきた。「知り合いの店だから、一緒に行けばやられることはありませんよ」という。ひさびさの潜入捜査である。訪れた店で、目に飛び込んできたのは屈強なマスターだった。首や腕が太くたくましく、存在そのものが凶器に思えたが、入店時には、最高のスマイルをいただいた。

　事情通によると、「マスター以外は、一応、みんな客。女がまちで声をかけて男の客と一緒に飲みに来るスタイル」という。泥酔してボックスで寝てしまっている男と、その隣で、熱心に女を口説いている男が『獲物』だという。しばらくすると、マスターが初老の男に伝票を見せて何やら話を始めた。さっきまでの勢いが失せて神妙な面持ちになった初老の男。少しも抵抗の素振りはなく、話はついたようだ。見ていて可哀想にも思えたが、勢いよく立ち上がって、ほかのボックスの客にまで酒をふるまい始めた。

　開き直ったのか、その男にとってたいした金額ではなかったのか、その店が「ぼったくり」なのかどうかは定かではない。経験者の小生としては、総合的に勘案し、事情通の言う「現場」だったように思う。ともかく、小生の『おすすめリンク』で紹介しているお店か、「知らない人には付いて行かない」という子どもの頃の言いつけを守れば、悲惨な目に遭うこともないだろう。

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