目下、東京は再開発に沸いている。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、インフラ整備が進み、外国人の観光客やビジネスマンの誘致を狙った大型商業施設やオフィスビルの建設も活況を呈している。そうしたなか、「新国立競技場」の建設が国家プロジェクトとして進められているが、さまざまな問題を抱え物議を醸している。
<ここにサブトラック?>
再開発状況を見ると、渋谷駅周辺では、渋谷ヒカリエに続く「渋谷駅地区駅街区開発計画」「渋谷駅地区道玄坂再開発計画」「渋谷駅南街区プロジェクト(渋谷駅三丁目21地区)」の3つの事業、3エリアに大型商業施設を含む開発計画が進んでいる。銀座6丁目の大規模再開発も着々と進み、6月には東京都と森ビルが進めた「虎ノ門ヒルズ」が開業を控えるなど、注目される再開発事業が目白押しだ。
一方で、国家プロジェクトでもある新国立競技場建設を含む「明治神宮外苑再開発」は、多くの疑問をはらんだまま、19年ラグビーワールドカップ、そして20年東京オリンピック・パラリンピックに向かって事業が進められている。
以前、「東京五輪に沸く中央集権の未来(中)」でもこの問題を取り上げたが、最近になって新たな問題が浮上した。
東京都オリンピック・パラリンピック準備局は、今年3月28日から環境アセスメントを実施。4月16日までを期限とし、調査計画書を公開して市民から意見を募集した。そこには、新国立競技場の建設を問題視する人々の目を疑う、1枚の図が掲載されていた。
現国立競技場の東隣に、「聖徳記念館絵画館」という建物がある。明治天皇を顕彰するために1926(大正15)年に建てられたものだ。問題の図を見ると、絵画館の馬蹄形の芝生園地とそれを縁どる道路の一部が廃止され、そこに陸上競技場のサブトラック建設が計画されている。
これまで、事業主の独立行政法人日本スポーツ振興センターや監督官庁の文部科学省は、「サブトラックについては、仮設かどうかも含めて設置は未定」としてきただけに、関係者にとっては寝耳に水だった。
そもそも、サブトラックがなければ、陸上競技場としての機能を十分に果たせない。日本陸上連盟も設置基準を定めており、安全なウォーミングアップ場を確保できないという理由がある。ゆえに、サブトラック設置の去就に注目が集まっていたが、"いつの間にか"環境アセスメントの図に書きこまれていたことで、4月に入って新たな問題として提起されたのだ。
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