<セウォル号沈没>
4月16日、修学旅行に出ている高校生など乗客476名を載せた旅客船セウォル号が、韓国南西部・珍島(チンド)付近で沈没する痛ましい事故が起こった。事故後、韓国政府は事故原因の究明と救助活動に力を入れているが、まだ期待するほどの成果がないのが現状である。沈没事故の推定される事故原因と救助・捜索の状況、疑問点などを、今回は取り上げて見たいと思う。
捜査本部は推定される事故原因として、急激な針路変更のほか、船が何かの原因で傾いたときに元に戻してくれる「復元力」が改修工事で弱くなっていた点、強い潮の流れ、過積載などを挙げた。
『急激な針路変更で貨物が左に偏ることによって船の均衡を失ったが、復元力が弱くなっていた船は強い潮の流れにあえなく傾いてしまった』――。現在のところ明らかになった捜査結果と、状況判断による沈没の原因と過程である。4月16日午前8時48分37秒、セウォル号はいきなり"J字"を描き、右方向に45度ぐらい旋回した。この付近は、通常船が10度ぐらい針路変更をする針路変更地点である。船舶自動識別装置(AIS)によると、旅客船のスピードは正常速度である17ノットから15ノット、10ノット、5ノットに徐々に落ちていた。
最も注目に値するものは、45度の針路変更である。針路変更を大きくせざるを得なかった原因、その原因に影響をおよぼした要因などを突き詰めていくと、一次的な事故原因の把握になるかもしれないからだ。
それから他の船舶または暗礁への衝突、内部爆発なども事故の原因として提起された。しかし、今回の事故海域は暗礁のない海底地形であるし、セウォル号の状態から、現在はそのような可能性は低いと見なされている。
船体の欠陥を、事故原因として挙げる専門家もいた。これを裏付けるような陳述と状況もある。総舵手である趙氏は、「私がミスをしたかもしれないが、通常より舵が回りすぎの感があった」と述べている。
また、乗務員の配置についても責任を問われている。経歴が1年ちょっとで、この船舶への乗船経歴は5カ月足らずであるだけでなく、韓国で一番強い潮の流れがあるこの海域で初めて操舵をする3等航海士と、旅客船についてほとんど経験のない操舵手がチームになったことだ。
また、無理な針路変更により、セウォル号は積載した貨物が片方に偏り均衡を失った。
セウォル号には1,157トンの乗用車124台、1トンのトラックが22台、2.5トン以上のトラックが34台など、合計で3,608トンの貨物と車両が積載されていたことが明らかになった。セウォル号の積載限度は3,794トンで積載限度はオーバーしていないが、船舶会社によるその積載量の数字自体を疑う向きもあるほどである。
さらに、貨物を固定する作業を疎かにしていたため、船が偏った際に荷物が崩れて移動する現象を起こし、均衡を失うのに拍車をかけた。
船の運航会社である清海鎮海運は、日本で1994年に建造され、2012年8月まで18年間九州南部で運航していた「フェリーなみのうえ」という旅客船を輸入し、12年8月から13年2月にかけて客室の増設工事を実施した。
韓国の造船産業は世界トップレベルだが、旅客船は需要が少なくてあまり韓国で建造されず、日本の中古の旅客船を輸入するケースが多いようだ。日本の場合、建造から20年になると廃船が義務付けられているため、今回のように廃船前に海外に売っているようだ。韓国は海運会社のロビーで、当初20年で廃船していたところを、30年に延ばしたということである。
とにかく、今回は輸入した船を増設した結果、総トン数は5,997トンから6,586トンになった。また、増設工事を行なうことによって、重心の位置が11.27メートルから11.78メートルになったし、定員も804名から921名に増加することになった。
このように増設工事をした船舶が均衡を維持するためには貨物を減らし、平衡水を増やさないといけないが、セウォル号の場合は利益追求が優先され、貨物の積載量は増やし、平衡水は減らされた可能性が高いと見ている。
改修工事によって重心は高くなり、復元力も弱くなっていたため、傾いた船舶はそのまま沈没した可能性が高い。
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