「100円ラーメン」の愛称で福岡の人々に愛され続けてきた「勝龍軒」(福岡市南区野間)が27日、閉店した。
25日、閉店の知らせを聞き、平日にもかかわらず多くの勝龍軒ファンが詰めかけ、午後3時の時点で昼時とほぼ変わらず40名以上が並ぶ大賑わいとなった。
「100円ラーメン」は先代から続く「勝龍軒」の伝統だった。消費税率が3%の頃から変わることなく、2度の増税を経た今もラーメンは1杯100円のまま。100円で出せるラーメンへのこだわりを貫き、値上げには首を縦に振らなかった。先代が亡くなった後もそのこだわりは引き継がれていた。
ラーメン自体は、癖のない至ってシンプルなとんこつ味にもちもちとしたストレート麺、トッピングもチャーシュー・きくらげ・葱という正統派。100円だからといって極端に量が少ないということもない。シンプルだが優しい味に「懐かしい味がする」「おいしい」との感想が聞かれた。
優しいのは味だけではなかった。店は女将さんを含めた2人で切り盛りしても息をつく暇もないほど忙しかった。それにもかかわらず、お客への心配りは決して忘れなかった。春だというのに初夏を思わせる陽気だったこの日、「暑かったでしょう。遅くなってごめんなさいね」と声をかけ、お客の方も、「いただきます」と声に出してラーメンを受け取り、「ごちそうさま」と声をかけて店を出ていった。
おつりを受け取らずに出て行ったお客を店の外まで追いかける場面もあった。自動販売機で100円を入れても何も買えないこの時代に、ラーメン1杯でもらえる100円と食べに足を運んでくれるお客様への感謝を忘れなかった勝龍軒。閉店を惜しむ声は尽きないが、同時に45年も頑張り続けた「勝龍軒」への労いと感謝の言葉も尽きることはないだろう。
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