当初は25日に発表されるはずだった、渡辺喜美みんなの党前代表の資金問題。化粧品会社会長から合計8億円借りた件で、渡辺氏が夫人の口座に移した資金の使途が焦点になっていた。当初は15日に発表するはずだった調査結果だが、渡辺氏側が資料の提出を渋ったために作業は難航。渡辺氏から直々に調査チームの責任者に任命された三谷英弘同党倫理委員長は、ハシゴを外されたかたちになった。
そこで10日間延長し、25日に発表することになっていたが、いきなり24日夕方に結果が発表された。その理由は何か――。
三谷氏は、「政治資金規正法違反ではないし、公職選挙法にも反しない」とした。これは大甘の判断だが、それ以上に批判が出たのは「社会的道義的観点から問題なし」とした点だ。党内ですら、「あまりにも甘すぎ」の声が出ている。
というのは、夫人の口座の多くの箇所はマスキング(字が読めないように黒で塗りつぶされている)され、具体的にどこにどのくらいの金額が遣われたかについて、まったくわからないからだ。
「クレジットカードの支払いだ」との本人側の主張を信じて三谷氏は、「これらは飲食や物品の購入に遣われたもので、株式投資などに遣われた形跡はなかった。よって社会的道義的に相当と判断した」としている。だが、「渡辺氏が夫人の口座に資金が移されて1年4カ月で、3,500万円もの大金が遣われている。こんなことは一般常識から考えられない」との意見も出ている。使途が正当なものかどうかは、どういう人と食事したのか、どういうものを購入したのかで判断されるべきだが、領収書やクレジットの明細などその種の情報公開はほとんどない。ただ、こんな声が党内にあった。
「渡辺夫人はカネ遣いが非常に荒い。2012年12月の衆院選では勝手に選挙CMを電通に頼み、予算を大幅にオーバーする契約を締結した。なんとか完成させると、関与した人たちを招いて打ち上げを開いてくれたが、かなり高級なフレンチの店だった」。
こうした散財も、三谷氏は報告記者会見で「党首夫人の活動として相当」と述べたが、これは妥当なのだろうか。
そもそもみんなの党は、飲食代に非常に厳しいことで知られている。他の政党の議員が「会合費」と称して仲間内での飲食代金や情報収集のために収支報告書に記載する経費も、みんなの党の場合は党本部がチェックし、収支報告書に記載することを許さなかった。金銭面でクリーンしておけということだ。
だが、渡辺氏とその夫人については、「治外法権」だったようだ。
しかも、このような話もある。夫人がイケメンのタレントに非常に入れ込んでおり、それに大金を貢いだのではないこという疑惑だ。
「夫人が入れ込んでいるのは、デザイナーの山本寛斎の異母弟の伊勢谷友介です。ニューヨーク大学に留学経験もあり、英語が堪能。180センチの長身で、甘いマスクの持ち主です」。夫人はすっかり伊勢谷にぞっこんで、そのために夫の渡辺氏のヘアスタイルまでも変えさせたという。
「渡辺氏のツンツンヘアは夫人の美容師が発案したと言われていますが、実は伊勢谷友介を真似したものです」。しかし、長身で小顔の伊勢谷と背の低い渡辺氏とでは、同じヘアスタイルのデザインが似合うはずもない。むしろ、「いい歳して、髪型ばかり若ぶってみっともない」と酷評だった。
「すべての疑惑を明らかにしなくては、潔白だというわけにはいかない」。
強い党内の声をよそに、中途半端のままに結果発表を1日早めた理由は、同日に安倍晋三首相とバラク・オバマ米国大統領の会談が行なわれたからだ。より大きなニュースの下では取り扱いは小さい。中途半端な内容でも、批判は少なくなる。そう見込んだと言われている。
「三谷氏は一生懸命に調査したようだ。渡辺氏に疑念が持たれないように。また一生懸命に報告書は書かれている。渡辺氏が無実に見えるように」。三谷氏をよく知るみんなの党のある議員がこう述べた。三谷氏にとって、この調査は本当に辛かったようだ。
実は14日に浅尾氏が新代表に選出されたとき、三谷氏はそっと涙を流していたのだ。代表選の後、簡単な食事が出され懇親会が開かれたが、三谷氏はそっと席をたち、会場の外に出て男泣きしたという。
ちょうどこの時期、三谷氏は週刊文春で同党所属の塩村文夏東京都議との醜聞が書きたてられていた。渡辺氏が代表の座を去って悲しいのか、それとも不倫疑惑が出てしまったのが悔しいのか......。彼の涙がどちらが原因で流されたものか、それは三谷氏自身しか知らないことだが、まさかくだらないスキャンダルで泣いていたのなら、三谷氏は政治家として失格だ。
「下手な結果なんぞを出そうものなら、三谷氏は政治生命を失うぞ」。調査結果が出される前、みんなの党から結いの党に移籍したある議員が三谷氏に警告したが、その声は三谷氏に届いたのだろうか。
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