<展示会ビジネスを都市戦略の基軸に置く>
「展示会ビジネス」というと小さい商売のように見られるが、「コンベンションビジネス」と言われるとビッグビジネスに思えてくる。この先端を走っているのが、ドイツ、アメリカ、そしてイタリア・ミラノである。世界最大の見本市会場は、ドイツのハノーバー国際見本市会場と言われている。土地の広さは約100万m2で、展示面積27館、49万8,000m2である。日本の幕張メッセの8倍規模と知れば、大体のことが想像できるであろう。
このハノーバー展示場の賃貸収入が、年間400億円を超えているそうだ。そこから逆算すると、概算1兆円以上の商談が成立したと推定される(普通、展示会家賃収入の25倍が取引商談金額になるという方程式が成り立っている)。また、往来客が膨大である。ドイツの最大コンベンションホールを設備しているのがミュンヘンだが、ここには世界から200万人以上の人たちが商談会に訪れている。仮に1人が滞在期間中に10万円を消費するとすれば、2,000億円の勘定になる。ミュンヘンの都市規模から言えば、莫大な貢献産業になるのだ。
この先発組ドイツを徹底的に研究し尽くしたのが、ミラノである。
まずはコンベンションの位置は、ミラノ中心部から12km外れた北西部になる。地下鉄の終点であり、この地下鉄で大量の人たちを輸送する。そしてミラノのブランド『家具とデザイン』を巧みに活かして、『ミラノサローネ』(ミラノ国際家具見本市)の権威を確立させた。また、『世界家具オリンピック』という異名がついたことで、参加者数が急増。この『ミラノサローネ』で話題になると、誉れとビジネス商談を得ることになる。
もともと世界家具見本市の本場は、ドイツ・ケルンであった。しかし、ミラノが1961年から家具展示会を始めると、一瞬にして「世界一の展示会」の評価を握った。2014年の『ミラノサローネ』は4月8日から13日まで1週間の期間であった。それ以外にも、ミラノの至るところでイベントが催されていたし、専門分科会の商談も繰り返し行なわれている。まさしく都市ミラノにとって、4月は『家具ビジネスの月』と言える。ホテル代も、通常の倍に跳ね上がる。飲食サービス業も便乗値上げしてしこたま儲ける。ミラノのサービス業者にとって、4月は最高の書き入れ時なのだ。
だがホテル代が高騰しようとも、商談者たちはやって来る。今年も30万人を超えたそうだ。日本の関係者も1,000人を下らない視察・商談者がやって来たそうだ。
ある視察者は、「あっちでもこっちでも同業者ばかりであった」と証言する。「ミラノ都市戦略に、このコンベンションビジネスを中核に据えた」関係者には感服する。すばらしい役人の介在がないことには、このようなコンベンションビジネスブランドづくりは成功しないだろう。
<視察団の大群、一歩誤れば迷子の恐れあり>
『ミラノ・サローネ』に向かったのは4月10日である。オープンして3日目になる。地下鉄に乗ったのだが、満員で立ちっぱなしの40分であった。駅に到達すると皆、我先に入場口方向へ走り出した。1つのチケット売場には150人くらいが並んでいる。トータル1,000人くらいが必死で入場券買いに奔走していた。昼12時でもこんな込み合いである。顔をうかがうと、やはりビジネスマン風の人たちが大半であり、白人系が多数を占めていた。中国人・アジア人の存在は陰が薄い。チケットを購入するまで40分かかった。
さて入場すると、会場の広さは格別なものだ。幅が0.57kmで奥行12km、展示面積が約22万m2におよぶ。東京ビッグサイトの全館展示面積の3倍を超える広さである。展示者の紹介パンフレットに集中して、一心不乱に見て回った。万歩計によると、この日1日での歩数は2万5,000歩を超えていた。1ブロックを歩くと、すぐに1,000歩単位で歩く勘定になる。1日では、とてもではないが回り切れるはずがない。納得するまで回るには、最低3日は必要ではないか――。
どこも押し合い、圧し合いの混雑なぶりのなかで、至るところにレストランが軒並み店を出している。1人の入場料が3,000円、会食したり打ち合わせする喫茶代に2,000円と、少なくとも最低5,000円は使う計算になる。入場者数30万人であるから×5,000円となれば15億円という勘定になる。予想されるコンベンションの直接収入が15億円になる。まことに1週間で売上が15億円とは、結構なビジネスである。
聞くところによるとこの『ミラノ・サローネ』に3億円の予算で出店するメーカーもあるそうだ。このメーカーは、展示会期間中に40~50億円の商談を成立させるとか――。この3億円の投資は、広告代といえば広告代であるが、確実に売上成約が見込まれるからありがたい話である。このメーカーは、30年続けて出店しているそうだ。オーナーの口癖は、「継続して貫徹すれば間違いなく毎年、売上は増えてくる」である。加えること、この見本市開催期間に成約された金額は、600億円から800億円と言われている。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:宮本 敏明
所在地:福岡市博多区板付5-2-9(福岡本社)
東京都港区南青山2-13-7(東京ショールーム)
大阪市中央区南船場4-7-6(大阪ショールーム)
設 立:1992年5月
資本金:2,000万円
TEL:092-584-2240(本社)
03-5772-3460(東京ショールーム)
06-4963-8777(大阪ショールーム)
URL:http://ritzwell.com/
<PRESIDENT PROFILE>
宮本 敏明(みやもと・としあき)
1945年福岡市生まれ。北九州大学卒業後、地場家具業界で経験を積み、イスの魅力にとりつかれて、92年5月(株)リッツウェルを創業。
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