工事現場には欠かせない立看板や信号機、カラーコーンやヘルメットまで取り扱う「総合安全商社」である(株)グリーンクロス。創業の地・福岡から九州一円、西日本、関東、東北へと営業エリアの拡大を続け、駆け上がった。目指すは全国制覇だが、目標達成に欠かせないのが、東京を中心とした関東エリアの攻略だ。地域性、企業風土の異なる地で奮闘する同社。代表取締役社長の久保孝二氏に話を聞いた。
――御社は見事に日本列島を南から攻め上がっています。東京に進出されたのは、いつでしょうか。
久保孝二氏(以下、久保) 東京に進出したのは3年前です。まず広告・看板製作のグリーンメディア事業部の東京営業所を開設しました。東京という大市場でどれだけやれるか、腕試し、情報収集を行ないました。ある程度の手ごたえを感じ、その翌年、本格的に東京の拠点を構えようと支社を立ち上げました。段階的に人員を増やし、現在25名の社員がいます。これから東京での営業活動を拡大するにあたっては、今の社屋では手狭だと感じて、2014年1月に埼玉県久喜市に物流拠点を開設します。すでに関東には埼玉営業所と東京支店があり、さらに新しく物流拠点を構え、この3拠点で関東を攻略していこうと考えています。
――進出してからこれまで、どのような手ごたえを感じていますか。
久保 まだまだです。一言で言えば、「物足りない」。市場規模の割には、思ったように成果が出ていないのが現状です。まだ始まったばかりなので、成果を求めるのは酷ですが、九州の商圏と比べるとケタ違いにチャンスは多いと感じています。それだから、余計にもどかしく感じるのでしょう。市場規模が大きいので、それに対応するためには物流倉庫が必要。物流拠点完成後、ようやくスタートラインに立てます。
――新規参入の企業として、知名度の低さという課題もありますが、「物足りない」要因としてはどのようなことが挙げられますか。
久保 最も感じているのは、思ったように営業件数を重ねられないこと。九州と比べると、物理的に営業しにくいと感じます。というのも、渋滞が常に発生しますし、いざ訪問先に着いたとしても駐車場が見つからないなど、予想外なところでつまづきました。九州では現場と現場事務所は近距離にあり、すぐに移動できますが、関東の場合は現場事務所がビルの一角にあることが多く、現場までの道のりが長い。ある程度、慣れが必要ですが、それまでもう少し時間がかかります。また、弊社製品は資材のなかでは、それほど高額なものではありませんので、販売先を増やさないと利益につながりません。ある意味、機動力が求められます。
そんな苦労はありますが、九州で取引のある大手ゼネコンからは関東でも注文が入りますし、紹介ももらえます。やはり取引先との関係は、どこにいても大切にしないといけません。
――全国展開していくなかで、今後、関東での売上をどれぐらい見込んでいますか。
久保 北海道まで展開し、本当の意味で全国展開したときに、関東で4割程度確保できるようにしないといけないと思っています。ただ、今はまだまだその水準ではありません。今はまだ40拠点中の関東3拠点という位置付けですが、将来的には業績を牽引する重要拠点として成長させていきたいと考えています。そのためには、人材の発掘、育成が鍵になります。できる限り、現地採用を増やしていきたい。
――関東での事業拡大は、東北3県での事業にも波及するかと思います。開設する埼玉の物流拠点は、東北への供給も担っているのですか。
久保 そうですね。しばらくはそうなると思いますが、関東での物流規模が拡大すると立ち行かなくなりますから、そのときは東北にも物流拠点を設けることになるでしょう。そうすれば、北海道進出への足がかりができます。このように「販路拡大、物流確保」の繰り返しで今のグリーンクロスがあるわけです。
――今は建設バブルだと言われますが、今後をどのように予想していますか。
久保 この状況はまだしばらく続くと思いますが、アテにはしていません。バブル期にはたいていどんな企業でも成長できます。逆境に強い会社でなければ、浮き沈みの激しい時代に生き残ることは難しいと考えます。バブルがはじけたとしても、日本全国には対応しきれないほどの工事現場があります。まだまだ開拓の余地があり、そのなかでどれだけシェアを高められるかがポイントだと思います。
前期の決算では、当初の予定よりも増収しましたが、本当はもっと伸ばせたと感じます。売上を上げるのは私ではなく、営業マンですから、彼らが活躍する環境を整えてやるだけです。優秀な営業マンを確保すること、そして伸び悩む営業マンを育成すること。特別なことではありません。これだけで売上は大きく変わります。この傾向が顕著に表れたら、配送体制を強化する。関東でも早くこの流れをつくっていきたいのです。
――建設市場は追い風を受けて、景気は上向いていますが、まだまだ以前の良かったときに戻っただけだとも言われます。
久保 そうですね。ただ、販売先の様子は以前とは決定的に違います。以前は値段をそれほど気にせず、買ってくれましたが、今はできるだけコストを押さえて、安く調達しようというのが伝わってきます。ですから、レンタルの割合も増えています。そうなると、弊社もレンタル商品のボリュームを増やしてそれに対応しないといけません。同じように、全国へ事業が広がれば、それだけ地域性に対応していかなければなりません。九州で培ったノウハウをそのまま他に持ち込んでいては、対応しきれない場面もあります。東京はまだまだこれから開拓していく未開の地。弊社がもう1段レベルアップできるかどうか、東京攻略がその可否を決めるでしょう。
<COMPANY INFORMATION>
(株)グリーンクロス
代 表:久保 孝二
所在地:福岡市中央区小笹5-22-34
資本金:6億9,726万円
TEL:092-521-6561
FAX:092-521-6564
URL:http://www.green-cross.co.jp/
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