福岡都市圏でフリーペーパー「ガリヤ」を発刊していた(株)ガリヤがついに力尽きた。数々の廃刊の危機を乗り越えてきた同社だったが、4月末の取引先への支払が不能となったため、事後処理を弁護士に一任。破産手続申請準備に入った。
同社は1990年2月、設立。地場大手広告代理店が手掛けるフリーペーパーで経験を積んだ長澤由起子社長が立ち上げ、商業ベースのフリーペーパーを日本で初めて手掛けた人物と言われている。設立25周年を迎えたばかりの同社がなぜ、経営破たんしたのか。
<最終号は電子書籍 編集後記に「サヨウナラ」>
4月25日(金)、フリーペーパー「ガリヤ」5月号の発刊日だった。
従来ならば、西鉄福岡天神駅前でスタッフらが手配りし、駅のコミュニティスペースに陳列されていた。しかし、5月号はそれがなかった。
そこで、同社ホームページで閲覧できる電子書籍を見た。同社ホームページの左上の電子書籍をクリックすると、5月号が開いた。
その冒頭には「この電子ブックをお別れ号とし、万感の思いを込めて、お届けさせて頂きます。あまりにも突然のことで、お伝えすべき言葉が今はどこにも見つかりません。しかし、ここに至るまでの物語は、いずれ発刊予定の【ガリヤ戦記】にてご説明させて頂くことを、お約束いたします。皆様、これまで、ほんとうに、ありがとうございました。」とあり、同社の長澤社長及び編集部一同と締め括ってある。
さらに目次の編集前記には長澤社長が「皆さま、ありがとうございました。ごきげんよう。さようなら」とコメント。その他のスタッフも内容にバラつきはあるものの、読者に対する惜別の言葉が述べられていた。
同日、同社に問い合わせてみると、「(廃刊の件は)社員は何も知らない。社長は不在」との回答。当の長澤社長自身も携帯に電話をかけても折り返しがなかった。
そして週明けの4月28日、支払不能のため破産手続きに入る主旨の張り紙が事務所前になされていた。要は広告を取り、デザインを起こしたものの、印刷を請け負ってくれる企業がなかったため、電子書籍を最終号とし、愛読者のみならず、広告を出稿してくれたクライアントに少しでも誠意を見せたかったという話なのだろう。
一見すると美談にも見えるが、そう簡単にことが済む訳ではない。ガリヤでの費用対効果を期待して5月号(紙媒体)に広告を出稿したクライアントおよび広告代理店に対しては背信行為である。25日は関係各所からの問い合わせが殺到したに違いない。
しかしながら、このような形で終焉を迎えるのならば、発刊できない主旨をクライアントに説明し、破産手続きを踏んだほうが、良かったはず。電子書籍なので、広告費を徴収したい意図があったのかは定かではないものの、長澤社長の誠意が逆に悪意として取られてしまえば、飛ぶ鳥の跡を濁してしまうことになる。
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