2010年1月に合併により誕生した糸島市は、福岡市に隣接していながらも豊かな自然に恵まれており、近年は各メディアに頻繁に取り上げられることもあって、一躍脚光を浴びている。これから糸島市は、どのように変貌を遂げていくのか。今年2月に新たに糸島市長に就任した月形祐二氏に、これからの糸島市のまちづくりや市政の方向性などについて話を聞いた。
<ほかにない強み、「知の拠点」を活かす>
――現在、糸島市では動画をつくったり、フリーペーパーを発行されたりと、いろいろなことをされていますが、やはりきちんと情報を外に向けて発信していくというのは、非常に大事なことですね。
月形祐二氏(以下、月形) まさにおっしゃる通りで、"知っている"ということが最も大事なことです。そのため、糸島を知ってもらうための仕掛けというのは、我々行政を含めた総合力で、全国の方々に向けて発信していきたいと思います。現在、ある程度は福岡都市圏で糸島という名前は認知されているものと私も思っていますし、皆さんのイメージでも「新鮮な農林水産物」「豊かな自然」「工房なども多くある」といったことが段々と認知されていると思います。ですが、それをもっと広い範囲の人たちに知ってもらうための仕掛けを、どんどんやっていかなければなりませんね。
――糸島市にはシティセールス課が設置されていて、そういったところはほかの自治体と比べてなかなか進んでいると感じるのですが、そのあたりはいかがですか。
月形 たしかに、行政がきちんと情報を発信していくという部分では、ここまで前向きに取り組んでいる自治体というのは少ないと思います。そういった意味では、松本前市長がシティセールス課のような特化した課を置いたことが、今の注目度の高さに大きく寄与していますし、ここが今後どう機能していくかによって、ブランド糸島を確立できるかできないかを左右する大きな要素になると考えています。
―― 一方で、「九州大学」という新しいブランドが着々と大きくなっていっています。そのあたりをどうしていくかも、これからにかかっていますね。
月形 これまで述べてきたように、我々糸島市が持つ強みというのは、豊かな自然だったり、そこから生み出される農林水産物など、どれも一朝一夕では成っていないものです。長年にわたって農業に従事する人たちが、自分の生み出す農産物について本当に自信と誇りを持って、土づくりから一所懸命取り組んできたおかげです。
ただ、そういったものだけならば、ほかのいろいろな地域にもあるわけです。そこで、ほかにはない糸島市だけのものと言えば、日本のなかでも有数の「知の拠点」である九州大学が、この地域に移転してきたことです。大学の研究成果というものはなかなか目に見えにくい部分があると思います。来年度から水素による燃料電池車が市販化されます。その先端の研究を行なっているのが、九州大学です。
また、市内にある糸島リサーチパーク内にある「水素エネルギー製品研究試験センター」の新棟も竣工しました。水素燃料電池車の普及のために必要な水素ステーションの誘致にも力を入れていきたい。
ということは、ここ糸島市には悠久の歴史――伊都国に代表されるような、日本がここから発祥したんじゃないかと言われるような歴史を持つなかにおいて、世界に発信するような最先端の研究もここで行なわれています。これが糸島の強さです。そのことを本当に皆さんに知っていただきたいですし、これを発信することによって、糸島のすばらしさというものが福岡都市圏のなかでも小さくともキラリと光る――そのような糸島市にしていきたいと思います。
▼関連リンク
・糸島市HP
■所信表明
(1)"ブランド糸島"の確立
(2)九州大学の知的・人的資源を生かした学術研究都市の構築
(3)子育て支援と特長ある学校教育の充実
(4)"住みたい、住み続けたい"定住の促進
(5)"元気で長生き"市民の健康づくり
(6)農林水産業、商工業の振興と働く場の創出
(7)自助・共助・公助による災害に強いまちづくり
(8)糸島が誇る自然環境の保全と文化の継承
(9)快適な生活環境の整備
(10)人権尊重のまちづくり及び男女共同参画社会の推進
(11)行政改革による足腰の強い財政運営
<プロフィール>
月形 祐二(つきがた・ゆうじ)
1958年生まれ。83年3月に西南学院大学法学部卒業後、一般企業への就職を経て、86年から衆議院議員・太田誠一氏の秘書を務める。その後、2003年に福岡県議会議員に初当選。3期を経た後、14年2月に糸島市長に就任した。
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