<先端、発信力の鈍さという説も流れる>
『ミラノサローネ』への『世界家具オリンピック』という名誉ある評価は、すっかり定着した。
前回報告した通り3,000社近い会社が展示会に出展して商談をたて続けに成約する。そうなるとメーカー・バイヤーともにビジネスする場として『ミラノサローネ』を積極的に活用しようとするようになったのである。日本の関係メーカーも有名どころが、大挙して参加するようになった。一般化するようになったのである。
そうなると、その逆に、先端の情報発信力が鈍くなるリスクが高まってくる。視察に行った経営者が「今年は身震いするような独創的な作品にお目にかかることが少なかった。いつも感動する作品があるのだが」と物足りない本音を漏らしている。
家具デザイン設計士のプロは辛口に指摘する。「『ミラノサローネ』が情報発信の世界のトップを走っていたのは5年前までだ。我々の仲間たちはあまり関心を示さなくなった」と。
商談が大型化するという大衆化が進む。そうなると必ずデザインの前衛者たちは不満を抱くようになる。これは世の習わしである。このジレンマをどう突破するのか見ものである。
<バイヤーが殺到>
ようやく探し求めてリッツウェルのブースにたどり着いた。ブースの写真を参照していただけたらわかるように広さは15坪程である。最近の傑作を展示している(この作品に関して次回で触れる)。訪問した時には日本人の2人の応対者がバイヤーと熱心に説明・商談を行なっていた。商談にきたメンバーの大半は白人系が多い。同業者の日本人はブースを眺めながら通り過ぎていく。しかし、ブースの前を往来する人たちの数の多さには驚いた。
同社の宮本敏明社長は4月2日からミラノに入っている。昨年は初めての単独ブースでの出店だから準備に奔走した。開催10日前から現地に来て必死で陣頭指揮を執ったのだが、今年は余裕がある。
「昨年は気だけが先走って周囲に目配りができませんでした」と語る。思うに昨年は単独での出展ゆえに「絶対、成功させてみせる」という使命感で頭が一杯であったのだろう。今年は来客の合間を縫って、他の業者の出展状況の研究に回ることも頻繁にあったそうだ。商談に訪れるバイヤーは昨年の倍に増えたとか。
【椅子に拘って】会社を起こして22年を迎える。宮本社長はイタリアの椅子を徹底的に研究し自分のセンスを導入して商品開発に没頭してきた。
当然、お客対象は富裕層である。「福岡、九州市場では限界がある」と東京進出を決断した。この英断が成功したのである。東京での売上が全体の70%を占めるようになった。
取りあえず【東京を撃つ】ことには成功した。会社を回し将来の布石を打つ余裕を持てるようになった。
そうなると当然、「自社の作品が世界に受けいれられるのか?」という衝動に駆られてくる。
宮本氏は自分の野心を公言するタイプではない。常に冷静・沈着な経営者である。しかし、自分の作品への拘りの強さは他人様の100倍抱いている。胸に秘めた並み並みならぬ闘志というものだ。
「お世話になったイタリアへ恩返しの意味で挑戦してみよう!!ヨーロッパ、世界に通用するか挑んでみよう」という【世界を撃つ】意欲が噴き出るようになったのである。
そこで具体的な行動が『ミラノサローネ』への共同出展であったのだ。さらに発展させて昨年、2013年に単独出展へと舵を切ったのである。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:宮本 敏明
所在地:福岡市博多区板付5-2-9(福岡本社)
東京都港区南青山2-13-7(東京ショールーム)
大阪市中央区南船場4-7-6(大阪ショールーム)
設 立:1992年5月
資本金:2,000万円
TEL:092-584-2240(本社)
03-5772-3460(東京ショールーム)
06-4963-8777(大阪ショールーム)
URL:http://ritzwell.com/
<PRESIDENT PROFILE>
宮本 敏明(みやもと・としあき)
1945年福岡市生まれ。北九州大学卒業後、地場家具業界で経験を積み、イスの魅力にとりつかれて、92年5月(株)リッツウェルを創業。
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