<業界トップクラスの収益性、相乗効果を生む各種事業>
ここで同社が手がける主な事業について見てみたい。「コロッケ倶楽部」のブランドで展開するカラオケ事業は、すでに九州一円で圧倒的な店舗網を確立。近年は首都圏にも拠点を配し、総数は88店舗に上る。成功の要因は、先進性と情報力にある。カラオケ事業を始めた91年当時、巷ではコンテナ型のカラオケボックスが主流を占めており、青少年の非行の温床になるという懸念から、レジャーとしてもやや薄暗いイメージが付きまとっていた。そこに屋内型・24時間営業の形態を初めて持ち込んだのが、同社の「コロッケ倶楽部」である。明るく安心できる店内と、お店で調理する美味しく衛生的な料理は、ファミリー層から大きな支持を獲得。カラオケを国民的レジャーに押し上げることに貢献するとともに、「コロッケ倶楽部」のブランドを世に知らしめることになる。加えて、貸しビル業で磨いた情報力とノウハウを元に、多店舗展開と飲食店舗の同時展開を推進。相乗効果を生み出すことで高い利益率を実現し、今やカラオケ事業の利益率は、上場企業においてトップクラスの地位を占める。
高い利益率で安定した基盤となるカラオケ事業に対し、近年の成長を牽引しているのが介護事業である。同社が展開する有料老人介護施設「さわやか倶楽部」は、質の高いサービスと入居・退去がしやすいシステムで高い評価を得ている。最大の特徴は、入居一時金を不要としたシステムだろう。高額な入居一時金は、施設の利用を開始する際に大きな負担となるばかりか、多くの場合、施設を退去しても大半が返却されない金である。結果として、高齢者を施設に縛り付ける悪要因としても指摘されてきた。入居一時金を排した同社のシステムが、利用者の利便性を格段に向上させたことは言うまでもない。
裏を返せば、同社のシステムは、金ではなく、サービスの質によって利用者とつながり続ける決意を露わにしたものとも言える。スタッフの教育に費やす時間は、実に年間500時間。「日本一の接遇とオペレーション」のスローガンのもと、日夜、満足度の高いホスピタリティの提供に向けた研鑚が続く。こうした取り組みが自治体や投資家からも評価され、先頃、北海道室蘭市から直々に誘致を受けるなど、「さわやか倶楽部」のフィールドは全国に広がりを見せている。
<充実した人材育成、重んじる「心の教育」>
先の研修の様子にも表れているように、同社の人材育成に対する力の入れようは、特筆すべきものがある。「『ギブ・アンド・ギブ』の精神で人に喜んでいただくことが、やがて自分の喜びとして返ってくる。これを若いうちから経験してほしい」――内山代表は自らも研修の壇上に立ち、自身の経営哲学を若い社員たちに語りかける。コンプライアンスの徹底は当然のこと、真に目指すべきは、地域に進んで貢献できる高い倫理観を備えた「人財」の育成なのだという。
その経営哲学は、雇用の場面にも色濃く反映されている。同社には、いわゆる「出戻り」社員が多く在籍しており、たとえ一度辞めた社員であっても、辞めた当時と同じ条件で雇用するシステムを採用している。そうした社員に「なぜ戻ってきたの?」と尋ねると、「(以前は面倒だと思っていたが)よその会社では、勉強させてくれないのが普通だと初めてわかった。これでは人間として成長できない」との答えが返ってくる。辞めた人間が笑顔で戻ってくる会社、笑顔で迎え入れる会社、「そうした会社であることが何よりの誇りです」と内山代表は笑顔をのぞかせた。
社員一丸で経営理念を共有し、「実践経営」と「実戦経営」に臨むウチヤマホールディングス。東証一部への挑戦の先に、理念として掲げる「幼青老共生」をいかなるかたちで実現するのか。その取り組みに注目が集まる。
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:内山 文治
所在地:北九州市小倉北区熊本2-10-10 内山第20ビル1F
設 立:2006年10月
資本金:22億2,239万円
TEL:093-551-0002
URL:http://www.uchiyama-gr.jp/
<PRESIDENT PRIFILE>
内山 文治(うちやま・ふみはる)
1941年4月12日生まれ。60年に内山米穀店を承継。事業拡大の過程で不動産事業の魅力に触れ、71年6月に内山ビル(株)を設立し、代表に就任。県内外に多くのビルを所有して貸しビル業を展開した。その後、バブル崩壊にともない事業を転換。カラオケ事業と飲食店事業、介護施設事業などを関連会社で手がけ、2006年に持ち株会社(株)ウチヤマホールディングスを設立し、代表に就任。12年6月に大証JASDAQ(スタンダード)上場、13年12月から東証二部。
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