長い指名停止期間を経て、同社もすでに入札に参加している。ただ、何もかも以前と同じではない。困難に立ち向かう社員の奮闘と団結する意識が芽生え、さらに強固なものにしていったのだ。「このような状況を経験したものしか、わからないことだと思います。この件で離れていった業者さんもありますし、さらに固い絆で結ばれた業者さんもいます。とくに、社員との団結はより会社を力強いものに変えたものと思います。この苦い経験があったからこそ、よく見えた部分もありましたね」と振り返る。
そして、見事に立ち直ったのだ。13年6月期の売上高は計画通り10億円を計上。経常利益は3,340万円の利益を確保した。「どん底」の過去は、もはや払拭できたと言えよう。
<頼れるのはやはり人材、品質にこだわる社員たち>
「やはり、企業は人材ありきですね」と海山次貴氏。公共工事や民間受注工事でもたしかな品質が会社としてのブランド力を育てていくのだという。
永続的な品質の維持の1つのツールとしてISO9001を認証取得している。そして、社内における勉強会も定期的に行なわれており、勉強を通じて社員同士のコミュケーションも図られている様子。「お互いが切磋琢磨して技術を磨く。品質向上に良い傾向となりそうです」と、社員教育と品質が合わさり相乗効果をもたらしている。
また、安全面の確保にも余念がなく、安全パトロールも月2回定期的に巡回している。こういった地道な活動こそ安全を意識した作業に直結するのはたしか。こういった活動に真剣になれるのも、同社が窮地に陥ったからこそ高い安全と信頼できる意識を持つことができるのだろう。
それを反映しているのが社員の行動である。ある社員は、施工管理者がびっくりするくらい品質にこだわって施工を行なっていたという逸話がある。それから質を落とすことなく、早い施工能力を社員全員が目指したという。これは会社のなかに目覚めた「海山イズム」の賜物ではないだろうか。
かつてない危機に遭遇し、急遽会社の舵取りを行なわなければならない境遇に直面した海山次貴氏。しかし、危機に際して社員と一丸となって会社を立て直したことで、さらに結束力が増した。同社はさらなる信頼を得るために、この苦い経験を活かしていくだろう。今後の活躍に期待したい。
≪ (前) |
<COMPANY INFORMATION>
代 表:海山 次貴
所在地:福岡市東区塩浜1-10-50
設 立:1984年1月
資本金:3,000万円
TEL:092-607-0022
URL:http://www.umiyamagumi.com/
<PROFILE>
海山 次貴(うみやま・つぐたか)
1989年4月、(株)海山組に入社。90年4月、光工業に入社。99年5月、同社に再入社。2010年2月には同社代表取締役社長に就任した。
※記事へのご意見はこちら