<商環境の激変に苦しむ>
西鉄天神大牟田線の福岡天神駅のホーム近くのコンコースには10年近く前からフリーペーパーのラックが複数設置されている。一枠4,000円(税別)で、以前はフリーペーパーで溢れかえっていたが、現在は、下段に空きが目立つようになった。フリーペーパー自体も以前ほどは発行されていない。かつて長澤社長が所属していた「エルフ」も今年3月末発刊をもって休刊となった。奇しくもガリヤの廃刊と時期を同じくしている。
フリーペーパーの営業手法は飛び込み営業が多く、ランチ営業をやっている飲食店は昼の営業終了後から夜の部の営業開始前までが勝負と言われ、美容室では店の混み具合を見計らいながら飛び込むという手法が行なわれてきた。これは今も昔も変わっていない。営業先の企業にアピールするのは媒体の発行部数や集客力による費用対効果、年間契約で継続発信することによる認知度の向上といったものだ。
頭を下げに下げまくり、なんとか契約を貰うといった営業も多い。それは、相手に交渉の主導権を握られ、値切られることにもつながる。ガリヤが創刊当時の成長期からそのような営業手法を取っていたとは思えない。だが、時が進むにつれ、大手企業の参入、ネットメディアの台頭などの商環境の激変に適応できず、お願い営業(物売り)が増えたようだ。
最大手のホットペッパー(リクルート)は、情報量強化を目的に広告出稿者に対してiPadを無償提供するサービスを実施した。地場メディアには到底マネできないサービスだ。リクルートはキャンペーンや年間契約を除き、今も昔も広告料金の値引きを行なわないことで知られている。
さらにフェイスブック、ツイッターなどのソーシャルメディアが普及。個人の情報発信力が強化され、紙媒体の口コミ情報は存在価値を失いつつある
4月、大学、専門学校への入学、転勤、入社など、初めて福岡に来る人たちは多い。何も知らない地でフリーペーパーやタウン誌の存在はとても大きなものだった。「何も知らない土地で、最初に手に取ったフリーペーパーがガリヤでした。福岡にはこんなに飲食店があるんだ!と感動したものでした」と、廃刊を惜しむ読者もいる。「タウン誌やフリーペーパーは町の文化で財産。いくら時代が変化しようとも、どんなに経営が苦しくても情報誌の灯を消してはいけない」と、某出版社の編集長は熱く語る。商業価値が下がり、文化財となりつつあるフリーペーパー。記事広告ビジネスが主体のガリヤの廃刊は歴史の必然だったのだろうか。
≪ (4) |
※記事へのご意見はこちら