<メキシコの豚肉は稀少スペックで味も上々>
福岡県太宰府市大佐野の(株)エムジーエスは、2002年7月の設立以来、食肉の加工、卸売で全国のスーパー、飲食店と取引を行なっている。
創業者の手島一敏社長は、総合商社の丸紅畜産で食肉を扱った経験から、同社のビジネスにはそれを発展させた「商物分離」を採用。自社では工場も倉庫も運送便も持たず、注文があると直接食肉業者から手配した配送便で届ける手法で業績を拡大してきた。
「商社時代にビーフとポークの買い付けをしていた関係で、独立した後も大手の外食企業やコンビニチェーンから取引を持ちかけられました。ただ、ノウハウはあっても高額取引でとても資金を回す自信がなかったので、100kg、200kgと地道に卸していきました。それが今となっては良かったのかもしれません」と手島社長は独立後を振り返る。
商品は手羽先からチューリップカツ、レッグボーン、角煮用バラ肉、ベーコン、チャーシュー、メンチカツまでと多種多彩。同社はそれらの安定供給を最優先に、国内産だけでなく海外からも積極的に調達している。
とくに豚肉は北米に1つしかないSQF2000取得のメキシコ工場に製造を委託。広大な麦畑に囲まれ安定した飼料、厳しい衛生管理のもとで生育される三元豚品種は、他社が扱わないようなスペックという。九州では馴染みは薄いが、関東では美味しいと消費者の評判も上々だ。
一方、もともとモノづくりに関心があった手島社長は、創業から3年目の05年に「手づくりの商品が出せる」と飲食事業に参入した。取引先の飲食店に配慮して子会社(株)アンドスマイルを設立し、第1弾として「カレーマンマ」を出店。並行して「アジアンカリーベース」「欧州カリーベース」などの業務用食材も販売した。
<取締役の弟をスカウト これを契機にラーメン事業に参入>
ところが、数年後、アンドスマイルはある人物との出会いで、ラーメン業態の開発に乗り出すことになる。同社の取締役がエムジーエス主催の野球大会に、野球が得意な弟を助っ人に帯同。その人物がアンドスマイル現社長の梅本二郎氏だったのである。
「梅本は医療機器販売会社の内視鏡チームにいて、売上を伸ばした実績の持ち主でした。話をしているとたしかに熱い心を持った青年で、その場で弊社にスカウトしようと決め、兄を通じて説得を試みました。すると、本人は『商売をしたい』と言ってきたため、アンドスマイルの方が良いだろうとなったわけです」と同社副社長。
梅本社長が希望した商売とは、「ラーメン店の運営」だった。手島社長は「よし、わかった。予算はこれだけ出すから、自由にやれ」と躊躇なくゴーサインを出した。
梅本社長はすぐに出店先を探し出し、カレーマンマの厨房を利用してスープや麺の創作に取りかかった。こうして「らーめん二男坊」は09年5月、福岡県春日市にオープン。コンセプトは濃厚でコクのある味でありながら、臭みも脂っぽさも塩辛さも感じさせないラーメンだった。
同店は開業からわずか7カ月で「福岡ラーメン総選挙2009」の第1位を獲得。デベロッパーに請われてキャナルシティ博多をはじめ、関東のお台場や海老名にも出店した。13年10月にはヤフージャパンの「第5回最強の次世代ラーメン決定戦」で、博多王の「黒味噌豚骨 重ね味」が堂々の3位に入賞した。
店舗数は福岡4店、関東3店で、収益は急速に伸びたが、梅本社長ら経営陣は利益を自らに分配することなく、すべて投資に回す堅実ぶり。決算数字もすべて公開するため、自由にさせたエムジーエスの方が驚くほどだ。
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<ワンポイントPR>
安全安心の食肉を国内外から調達して安定的に供給する。また、子会社を通じて取引先に業態のプロデュースや経営ノウハウを提案する。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:手島 一敏
所在地:福岡県太宰府市大佐野2-11-8
設 立:2002年7月
資本金:4,000万円
TEL:092-918-3076
URL:http://www.mgsfc.co.jp/instanthp/page09.html
<PROFILE>
手島 一敏(てしま・かずとし)
1958年福岡市生まれ。総合商社「丸紅畜産」で食肉の輸入卸に携わった後、2002年に(株)エムジーエスを設立。国内外からの食肉の買い付け、加工において工場も物流も外部に完全委託する商物分離で、業績を伸ばす。
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