<楽しさの大切さに世代差はない>
人をやる気にさせるのは難しい。モチベーションを上げるには、まずは皆で面白く、という雰囲気を上司が仕込んで、仕掛けをつくる必要がある。「楽しむ方法さえわかれば、後は若い社員が自主的に行動し始めます」と言う山﨑専務。実は専務自身、社員が100人を越えた時期に、活気がない宴会の光景を見て、意識して組織のモチベーションを高める必要を感じたという。個人で盛り上げるには限界がある。そこで計画的に芸を仕込み、演出を行なったところ、皆が魅せられて、その場に釘付けとなった。そのときの感動が、全体会議や運動会の原点にある。
「社員はボーナスが下がるより、全体会議が中止と言われた方が不安を感じると思いますよ」と山﨑専務は笑う。それだけ、会社が全体会議を重要視しているということであり、金銭的なインセンティブには限界があるということでもある。そして「弊社は人相手の仕事ですから、モチベーションを高める方法を学ぶことはとても大切だと考えています。社員が若いので、楽しく仕事をすることがモチベーション向上につながると思われるかもしれません。しかしこれは、年代に関係なく必要なことだと思います」とも語る。よく「今の若者は働かない」と言われるが、そのような若者は、楽しく働く親の背中を見て育っていない。嫌々仕事に出て行く親の姿をつくっているのは、仕事先の職場環境なのだ。幼い頃の印象が、彼らの社会への意欲を削ぐというのなら、仕事は楽しくないものという印象を抱かせるような大人をつくってはいけない。子どもの教育に携わる同社だからこそ、子どもの心理に与える影響には敏感だ。
<適材適所で人財を活かす>
一見、娯楽が目的のように思える宴会や運動会だが、コンシューマー相手の仕事において大切な「人をその気にさせる力」を養うには格好の学びの場だ。同じように、社内の人員配置も、本人の能力を見極め伸ばせる環境を与えるために重要なことだ。
同社は、会社が求めるキャリアに達しない場合、配置換えを行なって対処する。仕事ができないと思われる人財も、違う部署に配属した途端、潜在能力が花開くときもある。営業に向かなくても、管理等で能力を発揮できれば幹部クラスへ昇進していくことも可能だ。経営者には、組織として全体を見わたす能力が必要とされる。同社が積極的にM&Aを行なうのも、さまざまな適性を持つ人財を調和させた組織をつくるという目的があってのことだ。「組織が大きくなると、多種多様な適性の人財が必要です。吉田社長も幅広く採用しますから、受け皿をいくつか用意するために部門も増えていきます。仕事を通じて社会に貢献したいという前提があれば、いろいろなタイプの人間がいた方が、全体のバランスが取れていいですね」(山﨑専務)。
<当たり前であれば継続的に成長できる>
同グループは、「敬天愛人~天を敬い、人を愛し、人類の調和と発展に貢献する」を憲章としている。この壮大な理想をかたちにするにあたって「弊社では、当たり前のことを当たり前にやっている」というが、その当たり前ができなくて調和を崩していく企業は多い。「組織が、違う適性の人財を必要とするように、経営者にも違う価値観を自分のなかに持つことが必要です。これができれば、当たり前のことができるようになると実感しています」と山﨑専務。
人は学べば学ぶほど、自分が肯定していることの矛盾を受け入れ難くなる。自己肯定と自己否定にはある程度の振り幅があり、そのバランスが崩れたら当たり前のことができなくなる。自己肯定はハマると強い、自己否定はリスクが少ない。それらを共有できなくては継続的な成長はない。そして最も大切なのは社会という大きな環境のなかでの己の使命を知り、その使命における適財として、適所に身を置いて生きることだ。このような懐の深さを持つ企業は「当たり前」には存在しない。それを当たり前として行動できることが同社の強みだと言えるだろう。
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉田 知明
所在地:福岡市博多区店屋町8-17 MSTビル7F
設 立:2011年11月
資本金:1億3,759万7,852円
売上高 (13/4連結)約35億円
TEL:092-283-1188
URL:http://sc-holdings.co.jp/
<PROFILE>
吉田 知明(よしだ・ともあき)
1972年生まれ、鳥取県出身。学卒後、家庭教師派遣会社にて勤務。2001年にスタンダードカンパニーを設立、代表を務める。その後、店舗内装会社などの設立やM&Aによる会社取得など多角的な展開を行ない、11年11月に(株)SCホールディングスを設立、代表取締役に就任した。
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