韓国、台湾、日本は「野球が盛ん」とされており、WBC予選でも激戦区となるが、実は、この3カ国に共通して言えるのが「野球離れ」の加速化である。
韓国ではイ・スンヨプ選手やイ・ビョンギュ選手らが来日し、キム・ビョンホン選手がアメリカで活躍した頃は人気だったが、国内リーグの人気は下火だ。韓国人通訳者は「国内リーグ戦はほとんど見られていない。ホークスに入団したイ・デホ選手や、アメリカで活躍するチュ・シンス選手への注目はあるが、韓国リーグとはもはや関係ない存在。昔は多かった『プロ野球選手になりたい』という夢を語る子供もほとんどいなくなった」と、自国の状況を語る。
台湾でも、日本やアメリカでプレーする選手はいるものの、ヤンキースで活躍した王建民投手(19勝をマーク)以降、海外でブレークする選手はほとんどいない。国内は4チームで、そのうち1チームは昨シーズン終了後に身売り、選手との契約も遅れ経営が危険視される状況だ。台湾の野球放送関係者は「国内リーグの中継はあるものの視聴率は低い。球場に足を運ぶ観客が100人に満たないことさえある。野球が注目されるのは4年に1回のWBC予選くらい」と話す。
イチロー選手、ダルビッシュ選手、田中将大選手など優秀な人材のアメリカへの流出によって空洞化する日本のプロ野球界。以前は、全国ネット・全試合中継を行なっていた巨人戦も、地上波での放送はほぼ消滅し、視聴者数が限られたBS局で放送されるのみとなった。
「視聴率低下」「観客動員減少」を食い止めようと、10年近く前から現場の反対を押し切り、日本のプロ野球は「プレーオフ制(クライマックスシリーズ/CS)」を導入。シーズンをフルで戦ったうえに、さらにその3位と2位、勝者と1位が勝ち抜く仕組みにし、ペナントレース後の短期決戦を増やした。制度の主な目的は、「注目されない消化試合を減らす」ことにある。
従来は1位チームのみが日本シリーズに出場するため、シーズン後半で1位の可能性がないチーム同士の試合は消化試合となった。それが、短期決戦導入により、「3位以内に入れるかもしれない」チームが絡んだ試合は「意味」を持つため、5位と6位のチームの対戦でも「CSへ向けて!」という枕言葉をつけることによって、なんとか「意味を持たせる」ことができたのだ。その一方で、CSの本格導入によって、短期決戦に重心が置かれ、シーズンでの「記録」「タイトル」への関心が薄れた。クライマックスでの数字がカウントされないことによる。
「日本プロ野球界は、目先の数字をとるため、その伝統を捨てた」という見方もある。東京では、野球は見離され、福岡などいくつかの地方都市で盛り上がっている程度だが、地方主導の盛り上がりでは国民全体の娯楽としての共通性に欠け、さらに野球離れを加速化させることになりそうだ。
台湾からの旅行客向けに、東京ドームやヤフオクドームでの観戦ツアーが組み込まれることもある。ある台湾人ツアー利用者は、「ドームの器の大きさには驚くが、それだけ。試合にも興味がないし、時間の無駄だ。遠くから見てもよくわからない試合に高額な入場料を払うことができる日本人の金銭感覚が不思議」と冷めた反応を見せている。
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