<他社との良好な関係が呼び水に>
SPC(Special Purpose Company、特別目的会社)「(同)九設エナジー」をリース会社と提携設立し、メガソーラーによる売電を行なうという新事業に取り組む(株)九設。事業規模は1.2MW。総面積13,915.24m2となる土地の購入は同社が行なった。完成後はフルメンテナンスを引き受け、長く運営に関わることになる。
売電稼動が始まれば、売電収入、借地料、そしてフルメンテナンス料がSPCから同社に支払われる仕組みだ。SPCの収益は、同社とリース会社の両社に利益が上がるよう調整し、Win-Winの関係が成り立つようにしている。
空調衛生設備・電気設備工事業の同社は、福島第一原発事故以降、努めて環境面にも目を向け、太陽光発電設備工事の受注も行なってきた。その経験が新規事業のSPCで活かされる。事業参入のきっかけは、再生可能エネルギー固定買取価格が42円の頃に契約していた事業主が、別事業に専念するため同事業を辞退し、その案件を同社に好条件で譲渡してくれたことにある。
同社代表取締役専務を務める田島貴博氏は、「受注した理由は、弊社も発電事業をやってみれば、発注者側の気持ちを理解できるようになるだろうというものでした」と当時を振り返る。「弊社は多くの事業主から仕事を請け負います。しかし、事業主の気持ちは同じ視点に立たないとわからないことも多いもの。今回の話は、その同じ視点に立って物事を捉えられる良い機会だと考えたのです」(田島専務)。事業を譲渡した事業主も、同社を信頼し好条件で譲ってくれたという。ある意味、「人と人とのつながり」が呼び寄せたと言ってよい。これまで他企業との信頼関係を密に築いてきたからこそ、成立した案件だ。
「通常はどのような商売も、同業者との競合が激しくなりますが、売電事業は売電単価が決まっておりその心配がありません」と田島専務。太陽光は誰のうえにでも平等に降り注いでいるので、土地さえあれば競合を意識しなくても良い。なかでも九州は日照条件が良いエリア。この経験が今後、太陽光事業の受注を特需として増やすことも考えられる。
今まで全国を視野に営業エリアを広げてきた同社だが、今、田島専務が重視しているのは地場、九州での取引だ。「東京オリンピックに向けて関東圏での建設案件が過熱しつつある今、大手ゼネコン、サブコンが関東圏を主とした大型案件、高利益案件の受注に力を入れつつあります。弊社は、九州に本拠地を置き、地場での仕事を大切にしてきました。職人も九州で仕事を請け負う人々がほとんどです。今期売上50億に届きそうですが、あまり背伸びせずこれからも地場との関係を深めていきたいと思います」(田島専務)。
実は本件以外にも、大分県内で新たなメガソーラーの受注も決定している。本社がある大分県にメガソーラーを建て、九州の企業と提携して運営していく体制が整いつつある。その事業展開は、まさに「九州を大切にしていきたい」という思いの象徴のようだ。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田島 政博
所在地:福岡市博多区上牟田1-11-25(福岡支店)
設 立:1996年3月
資本金:2,000万円
TEL:092-409-3770
URL:http://www.kyuusetsu.co.jp/
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