原発再稼働に反対している福岡県や佐賀県の住民らが5月9日、九州原発玄海原発(佐賀県)での過酷事故を想定して30キロ圏内の自治体が作成している避難計画について、福岡市に要請した。「避難計画は机上でできても、実行可能でなければ意味がない」として、問題点を質問し、避難計画の困難な点を県に伝えることや、原発再稼働に疑問の声をあげるように求めた。要請したのは、再稼働に反対する福岡市民らでつくる「避難計画を考える会」(田中靖枝代表)と、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)。
避難計画では、玄海原発から30キロ圏内の佐賀県約19万人、長崎県約5万1,000人、福岡県約1万5,000人が避難する。福岡県内で避難計画を事前に作成しなければいけない地域は糸島市で、福岡市など16自治体に約1万5,000人が避難する。
要請では、「(原発を)国策として推進してきた国の責務は、第一に避難者の救済。その責任が果たされたとは到底言えない状況で、国は再稼働を進めようとしている」として、国の姿勢に対し、再稼働と避難計画は「車の両輪」と言いながら、避難計画の作成を自治体任せにしていると批判。「受け入れ先」としての福岡市の計画と、30キロ圏外でも高濃度で汚染された福島第1原発事故の実態に即して福岡市の避難計画を具体的に質問した。質問は、糸島市から福岡市へ何人がどのような経路、交通手段で避難するのか、避難してくる人のスクリーニング(汚染検査)・除染の方法、受け入れ期間、放射性プルームの到達時間、福岡市民の避難体制、安定ヨウ素剤の備蓄、配布体制、安全な水の確保など、10項目。
防災・危機管理部の堤清貴部長は、「福岡市は(福島原発事故前は)原子力災害を想定していなかった。30キロ圏外だが、福島原発事故の実態を踏まえて、必要だと独自に避難計画を作成した」と述べ、糸島市からの9,500人の避難受け入れでも、設置する避難所は10キロの余裕を持って、40キロ圏外の県立高校、市民会館、体育館などで確保していると答えた。
福岡市外からの避難者のスクリーニング・除染について、「基本的には、除染・スクリーニングは県が実施する。福岡市は、避難所の提供だが、想定の避難形態がつかめていない。短期の一時避難を想定しているのだろうが、それで済むのか。県に問い合わせているが、具体的には示されていない」とした。
福岡市民の避難について、堤部長は、放射性プルームの流れてきた向きによって、どの避難がどこに避難するか変わるので、「固定化できない」と回答し、「風向きを考えて、3方向くらい準備すべきだ」との認識を示した。ヨウ素剤の備蓄について、国の方針の変更に基づいて、今年度予算で56万人分に増やす方針だと答えた。
要請には、荒木龍昇市議も同席した。
「避難計画を考える会」では、5月中に避難受け入れ先の16自治体すべてに質問・要請する予定。「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」は、佐賀県内の10市10町にすでに質問・要請を終え、現在、結果のとりまとめ中だ。
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