5月8日、違法賭博の疑いで中洲3丁目にあるビルの3~6階を警察が捜査し、約50台の違法パチスロ機が押収された。この一件は、1カ月前まで同物件の借主の名義がガーナ大使であったことで、これまでの裏カジノ事件以上に世間の注目を集めている。事情通にとって興味深いのは、このビルの所有者を調べると、「丸源」の名が現れることだ。飲食ビルの賃貸で巨万の富を築いた旧丸源興産(株)。国際関係にも影響をおよぼす騒動の舞台は、丸源の遺産であった。
問題のビルは、中洲川端商店街と福博であい橋を結ぶ通りに面している。築60年近くの古いビルであったが、最近になってリニューアル工事が行なわれて外観を一新。1~2階を借りているキャバクラが店の娘たちを表示していることで目を引く建物になっていた。現所有者が売買で同ビルを取得したのは登記上2012年12月19日。まさか、取得したビルが違法賭博開帳の疑いで捜査を受けるとは、夢にも思わなかっただろう。
一時期、中洲には、ゲーム喫茶や高額レートの違法パチスロ機を含めて、違法賭博が行なわれる裏カジノが多数存在していたが、近年の取り締まりと街をあげての清浄化運動で激減した。そもそも裏カジノが跋扈する以前の中洲は、デパートや複数の映画館も存在し、世代を問わず、昼夜楽しめる街であった。そうした商業や娯楽の施設が姿を消し、不況にともなって増加する空きテナントへ、違法性の高いぼったくり店や裏カジノが入るようになったのである。
4月中旬には、親子連れでも安心して歩ける中洲をPRしようと、子ども向けのアトラクションや見世物を盛り込んだイベントが実施されたばかり。そのようななか、違法賭博へとつながるテナントの賃貸を意図的にやっていたとなれば、中洲における『反社会的行為』にほかならない。ほとんどの不動産仲介業者は、貸す前に極めて慎重に相手を見極めており、まず、借主の名義がガーナ大使という点で疑問符がつくはずだ。
「昼間もたくさんの人が安心して出歩ける街にしたい」という地元関係者は多いが、そうした想いを裏切るようなかたちで今回の事件が発覚した。ガーナ大使の関与が疑われていることで、全国的にも報道され、「やっぱり中洲は危険なところだと思われてしまう」という懸念の声があがっている。
<プロフィール>
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。海上自衛隊、雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、働くお父さんたちの「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポート。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の風俗関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲に"ほぼ毎日"出没している。
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