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絶滅の危機に直面する日本民族(1) 
未来トレンド分析シリーズ
2014年5月12日 15:06
参議院議員・国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 我が国は少子高齢化の影響もあり、人口が急速に減少している。海外からは「信じがたい縮小社会」「絶滅の危機に瀕する日本民族」とまで揶揄される有様だ。人口減少社会こそ日本にとって、戦後最大の国家的危機と言えよう。
 2014年5月、「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務大臣)は衝撃的な人口推計を発表した。曰く「2040年には全国の半数にあたる896市町村で20~39歳の女性が5割以上減り、人口減の加速により現在の行政サービスは維持できなくなる」。国土交通省でも「全国の6割の地域で2050年には人口が半分以下になる」と公表。
 しかも、東京への人口集中が進んでいるとはいうものの、都内でも豊島区、杉並区、足立区では20代と30代の女性が半減するというから驚く。実は、人口の一極集中が進む東京都だが、すでに出生率では全国最低都市となっているのである。

 迫りくる危機の核心は何か――。人口動態調査を見れば、我が国においては人口が急速に減少し、労働力不足や国力低下が歴然としているにもかかわらず、政府も国民も何ら効果的な対策を練ってこなかったことに尽きるのではないか。伝統的な家族主義は過去のものとなり、子育ての放棄や子どもが親を殺害するような犯罪が連日のように報道されている。しかし、大多数の国民の間ではそれらに無関心なことが多い。
 実際には日本の社会や経済にとって、これほど深刻な影響をもたらす現象はないのだが、「根拠なき楽観論」にどっぷりと浸かった国民の間では危機感も希薄で、政府における対策も手ぬるい現状が続いている。このまま人口減少が進むと、我が国の国家としての基盤が崩壊するのは時間の問題である。「無人国家」はあり得ない。早急な意識改革と具体的な人口確保政策が求められる所以であろう。

hutari.jpg 思えば、06年が日本の未来にとって大きな転換点だった。その年、新生児の数が死亡者の数を下回ったのである。戦後の歴史において、人口減少が後戻りできない年として記録されたのだった。こうした人口縮小の流れが止まらなければ、30年を経ずして日本人の数は20%近く減少することになるのは確実だ。
 言い換えれば、世界最速のスピードで、日本人は地球上から消滅するプロセスに突入したのである。海外からは「女性が子どもを産まない」社会ではなく、「子どもを産む女性がいない」社会になりかねないとの警告が頻繁に発せられている。しかし、どれだけの日本人がこの危機的状況を理解しているのだろうか。

 もちろん、人口減少が見られるのは日本に限らない。先進国では、概ね同様の傾向が見られる。たとえばドイツでは、02年から09年の間だけで、70万人の人口が減少した。ドイツ経済は順調に発展しているものの、人口縮小がもたらす社会的インパクトの大きさに危機感が広まったのである。平和な時代において、社会が豊かさを増せば、人口が抑制されることは通常のパターンではある。

 しかし、急激な人口減少は社会構造や経済体制そのものを瓦解させかねない。家族と地域のあり方、社会や教育環境、産業や雇用、そして将来への希望が持てるかどうか、といった心理的な要素も含め、極めて甚大な影響が想定される。
 そこで人口規模が日本の3分の2しかないドイツをはじめ、欧米先進諸国ではこうした事態を真剣に受け止め、人口減少をストップさせるべく、さまざまな政策を打ち出すことになった。子ども手当の支給、税制面での優遇措置、育児休業の導入などである。
 その結果、イギリス、フランス、ハンガリー、スウェーデン、クロアチアといったヨーロッパ諸国のみならず、アメリカにおいても、高齢化は進んでいるものの、人口減少には歯止めがかかり、一転して人口の増加が見られるようになっている。とくにアメリカとフランスの場合は、そうした傾向が顕著である。

 一方、日本の場合には、人口減少の急速な進展に歯止めがかからない状態が続いている。たしかに、日本では100歳を超える高齢者の数が5万人に達し、まさに世界に冠たる長寿社会ではある。2040年には100歳を超える「百寿者(センテネリアンズ)」の数が新生児より多くなることが確実視されているほどだ。
 問題は、いくら高齢者の数が増えたとしても、200歳や300歳まで生きるわけではない。すなわち、現在の少子化の傾向がこのまま続けば、日本では100年経てば人口が現在の半分以下、「1000年経てば日本人はこの地球上から消滅してしまう」ということ。まさに、日本民族が絶滅の危機に瀕する状況が想定されているのである。

 現在、国会では集団的自衛権が大きな議論となっている。言うまでもなく、日本の国土をいかに外国の侵入から守るか、ということは国家の存亡にとって緊急の課題である。しかし、国家を構成するには国土だけではなく、そこに住む人間の存在が欠かせない。国民なくして、国家は成り立たない話である。よって、長期的な視点に立てば、いかにして日本人が絶滅しないようにするかを、今から真剣に考え、対策を講じる必要があるのである。

 14年現在、この日本で生きている日本人の75%以上は、人口が1億人を切ると見られる2040年にも生きているに違いない。高度医療や手厚い福祉のおかげで、さまざまな不安や困難はあるとはいえ、現代社会に生きる日本人は、世界最長の寿命を謳歌している。自殺者が毎年3万人を超えているとは言うものの、平均余命は記録を更新する一方だ。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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