<財閥グループにも両極化>
「韓国の30大グループの2013年度の現金性資産の合計は、前年対比18%増加した158兆ウォンに達した。この数字は、韓国の政府予算320兆ウォンのほぼ半分になる金額である。そのなかで、三星グループは60兆ウォンの資産を持っていて1位を占めている」(韓国経済TV、2014年3月30日ニュースから抜粋)。
「韓国の30大グループの資産総額、売上高合計額のなかで、上位4位(三星グループ、現代自動車グループ、SKグループ、LGグループ)が占める割合はそれぞれ52.0%、55.4%に達した。上位の4大グループは全体の半分ぐらいの資産を持っていることになる。当期純利益においては、何と全体の90.0%にもなっている」(マネーToday、14年4月1日記事より)。
上記に引用した記事の数字からもわかるように、韓国経済においては、いくつかのグループが占める割合がどんどん高くなっている。それを懸念する声もあるのだが、どういうわけか、それを正当化する論調が多いのも事実である。韓国では、「三星(サムスン)と現代(ヒュンダイ)を非難する行為は、韓国の悪口を言うことと同じことだ」と考えている人もいる。三星と現代に代表される韓国の財閥グループが、韓国経済においてどれだけ弊害であるかを論じることは、一種のタブーのようになっている。
この財閥企業がグローバル的に活躍することによって今の韓国経済は成り立っているし、韓国の国力は向上したと固く信じてやまない人も多い。一般大衆には、いや政治家にとっても、この財閥企業という存在は逆らえない存在であるし、やぶへびである。そのような環境下で、財閥系企業のなかでも上位グループと中・下位グループとの格差が開きつつある。
最近になって財閥企業の問題も露呈しており、政治の世界だけでなく、経済界でもこのような状況に対して反省し、状況を変えようとしているが、それがうまくいくかどうかは予断を許さない状況である。
そのなかで今回、韓国経済GDPの最も多くの部分を占めている三星グループを、フィンランドのノキアの事例を通して考えて見たい。
<ノキアの没落とフィンランド経済>
皆さんも、ノキアという企業の名前はご存知のことだろう。一時期においては携帯電話で世界トップの座を占めていた企業で、フィンランド経済の30%を占めるほどの巨大企業でもあった。
だが、その巨大企業にかげりが見え始めてから、世の中は騒然となった。「もしノキアがつぶれたら、フィンランド経済もめちゃくちゃになる」と言う議論が持ち上がったのだ。
ところが、結果は世間の予想を裏切るものであった。すなわち、ノキアはつぶれたが、懸念していたフィンランド経済は健在であった。これについては、とても不思議であると思っている向きも多いようだ。国家経済の3分の1ぐらいを占めていた企業に異変が起きても、国家経済はびくともしなかったからだ。
しかし、詳細を聞いてみると自ずと納得がいく。ノキアがかげり始め、職を失うようになった多くの研究開発に従事していた人材は、自らベンチャー企業を立ち上げたのだが、その新たな中小企業がフィンランド経済の新しい成長エンジンになって、国の経済を活性化させる結果につながったのだ。
たとえるなら、老いかけていたフィンランド経済に、若者の血が輸血されたような結果を招いたのである。ノキアがつぶれたことは、結果的にはフィンランド経済にはプラスに作用したわけである。言葉を変えると、フィンランド経済を牛耳っていた巨大企業がつぶれることによって、かえってフィンランド経済の企業生態系に活気が戻ってきたという主張である。
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