9.委員会設置会社の今後の流れについて
◆人選が決まったことで、みずほFGは6月の株主総会の承認を受けて委員会設置会社に移行し、社外取締役が経営を監督する体制が整うことになる。
今回みずほ銀行が委員会設置会社に移行することになったが、ビッグバン三行のうち、三菱UFJと三井住友の両フィナンシャルグループは委員会設置会社への移行に慎重となっていると言われている。それは社外取締役の人選が大変だと言われているからだ。メガバンクは日本の有力企業とほとんど取引があり、独立性の高い社外取締役を選ぶのは至難の業となる。
三井住友銀行の國部毅頭取は、「それぞれの銀行によって事情が違うので、すべての企業に一律に導入するのはいかがなものかと思っている」と語り、委員会設置会社への移行には慎重な姿勢を崩していない。
◆一方、こうした委員会設置会社が増えることを歓迎しているのが、弁護士や公認会計士の面々と言われている。
企業側でも社外取締役の招聘について「企業経営に精通した人物が委員長に就いてほしいが、結局、大半が弁護士や公認会計士に落ち着くのではないか」との声が上がっている。
弁護士や会計士の業界では、資格試験で多くの合格者が出たため、仕事にあぶれる若手が増えている。就職難のため先輩弁護士の事務所に居候する「イソ弁」や、固定給なしで事務所を間借りする「ノキ弁」も珍しくないのが現実だ。
同じく公認会計士も、企業の需要が伸びると見込んで大量合格させたものの仕事にあぶれる者が急増しており、大手の会計事務所に就職するには、コネがないと入れないと言われるほどの狭き門になっていると言われている。
こうした苦境にあえぐ弁護士、公認会計士業界にとって、社外取締役への招聘は、まさに朗報と見られている。というのは「社外取締役に選ばれるのは著名人だけ」であろうが、弁護士や公認会計士の需要が高まれば、必然的に新人も救われることになるとの見方からだ。
昨年末、コーポレートガバナンスを強化するための会社法改正案が閣議決定された。焦点となった上場企業への社外取締役の設置義務付けは経済界の反対を受け見送りになったが、法施行の2年後に再検討することになった。日本ではまだソニーなどごく一部の企業しか導入していないのが現状である。
また金融機関については、バーゼル銀行監督委員会の要請もあり、海外に支店を有する国際基準の銀行は、いずれ委員会設置会社への移行は避けられないと見られている。みずほFGの委員会設置会社への移行は、まさに試金石といえそうだ。
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