八百長疑惑など慢性的なファン離れから台湾球界を救ったのは、昨年開催された「第3回WBC」とされる。オランダ、韓国、台湾、オーストラリアと強豪チームの並びとなった「プールB」(台湾ラウンド)。台湾が、韓国戦では敗れはしたもののオーストラリア、オランダを撃破し、東京ラウンドへの進出を決めた。
初戦のオーストラリア戦で、ヤンキースに在籍していたエース王建民選手の力投で勝利したことで、オランダ戦にも弾みがついた。過去2回の大会はアジア勢の壁を破れず1次ラウンドで敗退していただけに、国を挙げての喝采となった。しかし、台湾チームの勢いにブレーキがかかり始めていたのは、この台湾ラウンドからだった。
台湾ラウンド最終戦の「韓国」との対戦。台湾は終盤まで2−0とリードしながら、8回ウラに3点を奪われ逆転負け。台湾は勝敗と得失点率からプールBを「1位」で抜け、韓国チームは最終戦に勝利したものの、得失点率でおよばず「敗退」となった。結果的に東京ラウンドに駒を進めたとはいえ、最終戦、終盤まで見えていた「勝利」がするりと抜け「詰めの甘さ」がしこりとなった。
そして、いまだに「語り種」となっている3月8日の東京ドーム「日本対台湾」だ。この試合も、台湾が途中までリードを奪う展開になっていた。しかし一方で、選手の間には「イヤな予感」が立ちこめていたという。追加点が奪えない展開、試合に出場したある選手は試合を振り返って言う。
「日本相手に勝つには、大量リードがいる。そして、相手の格上ピッチャーを出させないようにして、逃げきらないと勝てない。接戦では粘られて終盤で逆転される」。
韓国戦でも終盤に逆転された台湾。日本戦も9回に土壇場で追いつかれ、延長10回に勝ち越しを許した。台湾球界で指揮を執った日本人指導者は、「あの試合で勝てなかったら、台湾はこの先いつ日本に勝つんだ?という試合だった」と試合を振り返る。実際、台湾の選手数人は、試合での采配に関して、監督に意見したと言う。
少なからずいる日本人の台湾愛好家は「いい試合だった。ありがとう」と感想を持つが、台湾サイドの野球関係者からは「韓国、日本と連敗。さらには・・・」という苦い気分のようだ。
実際、チームは連敗の悪い流れを引きずり、翌日のキューバ戦では0−14と大敗を喫している。台湾チームのある関係者は、「あれが台湾チームの現状。日本に接戦で負けた時点で気持ちが切れてしまった」と話す。日本はアメリカラウンドに進出したこともあり「台湾はいいチームだった」と美談として懐古するだろうが、あくまで「勝者」の理屈。台湾からすれば、「3連敗で終わった」と後味の悪い終わり方をしているのだという。
WBCがきっかけとなり、メジャーで大活躍のマニー・ラミレス選手の加入などで注目を集めたものの、その目玉のラミレス選手はシーズン途中で帰国。日本人監督の途中解任、その後の身売り問題など、決して順風満帆とは言えない台湾プロ野球。身売り後の新球団に加入する予定のドラフト選手とは交渉が大幅に遅れ、「交渉期限ギリギリ」での入団契約となった。
一部の熱狂的「野球ファン」に対しては順調に見えるが、一般市民が注目するのはあくまで「国際試合」のレベル。一般市民に、どこまで「プロ野球」を浸透させていくのか、今後の「仕掛けづくり」が課題となるだろう。
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