6月10日(火)、データ・マックスではノンフィクション作家でジャーナリストの立石泰則氏を福岡に招き、講演会を開催する。講演のテーマは「自壊するソニーとパナソニック~創業者精神(経営理念)を失った企業の行く末」。
日本の家電メーカーは海外勢に押されて苦境に陥った。とくに国内トップクラスのソニーやパナソニックへの影響が大きい。不動産や事業の売却、また人員削減などの大幅なリストラで一時的な黒字は出すものの、本業の業績が回復し赤字体質を脱却したとは到底言いがたい。
2011年11月に発刊した『さよなら!僕らのソニー』(文藝春秋)で立石氏は、小学生のときにソニー製のテープレコーダーに初めて触れ、父から「ソニーは音が断然いい」ことを聞かされた。他を圧倒する技術に裏付けられた「ソニー神話」だ。
しかし、その神話が徐々に崩壊していく。立石氏は、第二章のテーマでもある「ソニー神話の崩壊」を実体験したのを94年頃とする。ソニー製品が「赤札商品」(採算度外視で赤字覚悟の格安商品)というこれまでになかったかたちで、東京・秋葉原のある店頭で並べられていたのを取材で見かけたのがきっかけだった。そこから「ソニーはなぜ業績が悪化したのか」という、現在に至る考察が始まっていく。
一方、13年2月には『パナソニック・ショック』(文藝春秋)を発刊した。その契機は、ソニーだけでなく、シャープ、パナソニックという日本を代表する大手家電メーカー3社が、軒並み12年3月期連結決算で大赤字を出したことにある。
なかでもパナソニックの傷は深かった。7兆8,462億円の売上高に対し、7,721億円の最終赤字。立石氏は「いずれもテレビ事業の不振が赤字決算の元凶」とするが、パナソニックの巨額な赤字にはとくに衝撃を受けたという。さらに、13年3月期も最終赤字が7,542億円となり、2期連続で7,000億円以上の赤字となる「パナソニック・ショック」が起こった。
立石氏は、87年に初めて同社(当時は松下電器産業)を取材し、88年には『復讐する神話 松下幸之助の昭和史』(文藝春秋)という処女作を発表するほど思い入れが深い。それだけに「パナソニックは何が原因でこのような事態に陥ってしまったのか」を、主に創業者・松下幸之助氏から連なる、現在までの経営者の変遷のなかで捉えようとした。
これまで両社がどんな道を歩み、これからどうなっていくのか――長年取材を重ねてきた立石氏ならではの目線で、本質な問題点が講演会において語られることだろう。
■自壊するソニーとパナソニック~創業者精神(経営理念)を失った企業の行く末
<講 師>
ノンフィクション作家/ジャーナリスト 立石 泰則 氏
<日 時>
2014年6月10日(火) 午後6時~7時半(開場:午後5時半)
<会 場>
天神クリスタルビル 3階大ホール
(福岡市中央区天神4-6-7)
<会 費>
4,000円(税込)
<プロフィール>
立石 泰則(たていし・やすのり)
1950年、福岡県北九州市生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。経済誌編集者、週刊誌記者などを経て 88年独立。処女作は、同年の『復讐する神話 松下幸之助の昭和史』(文藝春秋)。93年『覇者の誤算 日米コンピュータ戦争の40年(上・下)』で第15回講談社ノンフィクション賞受賞。2000年『魔術師三原脩と西鉄ライオンズ』で第10回ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。11年『さよなら!僕らのソニー』(文藝春秋)、13年『パナソニック・ショック』(文藝春秋)を発刊した。他に『ソニーと松下』『ソニーインサイドストーリー』『ヤマダ電機の暴走』など著書多数。
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