今年4月、行橋市で行なわれた福岡県議会議員補欠選挙で、34歳の若き弁護士が初当選した。激しい選挙戦が展開するなか、堀氏を見守る若手県議・仁戸田元氣氏の姿があった。2人はともに行橋市出身、高校まで肩を並べて学んだ親友。社会に出て別々の道を歩んできたが、今また福岡県政という同じステージに立った。互いに健闘を誓い合う2人の対談を取材した。
「外から自分のふるさとを見て、わかったことがあります」。4月中旬、強い雨と風に見舞われるなか、街を行き交う有権者に、行橋市の将来について熱く語る堀氏と仁戸田氏の姿があった。2人は県立京都高校の同級生。卒業後、堀氏は早稲田大学へ入学。仁戸田氏は東京で1年間浪人生活を送ったが、長く親友として交遊は続いていた。
「学生の頃、まさか2人とも政治家になるなんて思ってもいなかった」(仁戸田氏)。
先に政治を志したのは仁戸田氏だった。日本大学卒業後、(株)神戸製鋼所に入社。(財)松下政経塾(27期生)を経て、(株)PHP総合研究所特別研究員として勤務。11年4月、福岡県議選に福岡市西区で初当選。若手議員として、日々研鑽を積みながら、政治活動に取り組んでいる。一方、堀氏は政治ではなく法律家の道を志した。「祖父が行橋市長でしたが、政治家になるつもりはなく、どちらかと言えば、1990年代の汚職事件の影響でマイナスのイメージを持っていたぐらいです」(堀氏)。弁護士となり、交通事故や少年事件などの裁判に携わるなかで社会の現実を知っていく。
「なんとなく、地元の人でもおかしいと思うことがあるけど言い出せない雰囲気がある」と、2人は口を揃える。13年3月26日、九州自動車道の苅田北九州空港IC・行橋IC間(8.6km)が開通した。交通の便が良くなり、活性化が期待される行橋市だが、「町全体が良くなっていくかというと交通インフラだけでは変わらない」と堀氏。「外に出た若い人たちが、地元に帰ってきて仕事をしようと思うことが大切」と仁戸田氏。官民一体学校による教育改革、起業家誘致による雇用創出など、夜遅くまで2人の闊達な議論は続いた。
民間活力を呼び起こすための意見交換もなされた。「福岡県では、運送業やサービス業などで、明らかに有効求人倍率が高い業種があります。しかし、大学生が就職しない。一方で、知的な層を厚くしようとしていますが、それを受け入れる雇用のボリュームが乏しい」(仁戸田氏)。「NPO法人が行政の下請けになりすぎている感があります。NPOが自分たちで事業ができるようなお金の流れが必要です。たとえば、行政とNPOという『公』を2つつくり、市民が選択するNPOに税金の一部が流れるとか」(堀氏)。
行橋市に限らず、福岡市西区をはじめ福岡県の各地域の課題には、共通する部分は多い。九州自動車道によって福岡市西区と行橋市の間は車で1時間強と近くなった。外からふるさとを見てきた2人の若い力が今後も切磋琢磨し、福岡県全体に活力を与えることを一県民として期待したい。
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