NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、『小沢一郎議員を支援する会』が主催するシンポジウムが開催されるのを機に、「小沢一郎氏裁判事件」が生じた2009年から現在までの日本政治の流れと問題を指摘する5月13日付の記事を紹介する。
5月23日(金)夕刻、東京池袋の豊島公会堂で、『小沢一郎議員を支援する会』が主催するシンポジウムが開催される。テーマは、「小沢一郎が語る これからの日本の政治と外交」である。講師として小沢一郎氏が出席される。私も「安倍政権の経済政策を批判する」のタイトルで話をさせていただく。また、ビッグなサプライズゲストも登壇の見込みである。
日本政治を再建するために、主権者である市民が主導して道を切り拓かねばならない。この大きな目標の下に多数の主権者の参集が求められる。
日本政治はこの4年半の間に二転三転した。
「主権者のための政治」
実現を目指す人々は、2009年9月に樹立された鳩山政権に大いなる期待を寄せた。米官業のトライアングルが支配する政治を打破し、新たに主権者である国民が支配する政治の実現が期待された。「主権者の主権者による主権者のための政治」の実現こそ、鳩山政権誕生の意味であった。
そして、この政権樹立を主導したのが当時の民主党小沢-鳩山ラインであった。この民主党と現在の民主党は似ても似つかぬものである。
小沢一郎氏も鳩山友紀夫氏も現在は民主党を離れている。この事実が何よりの証左だ。
(註 鳩山由紀夫氏は現在、氏名の表記を鳩山友紀夫氏に変更している。このため、本ブログにおいても、歴史事実の記述以外は鳩山友紀夫氏の表記を用いて表現している)
小沢-鳩山ラインが樹立した政権は、米官業のトライアングルによる日本政治支配を打破する具体策を備えていた。米国による日本支配打破を象徴する具体的政策方針が普天間の県外・国外移設であった。
結果的にこの施策実現の道筋は確立されなかったが、新政権が明確な方針を提示したことは確かな事実である
実である。官僚による日本支配を打破するための具体的施策が天下り利権根絶の方針だった。
野田佳彦氏が2009年8月15日に行なった「シロアリ演説」が有名になったが、消費税増税を検討する前に、官僚の天下りとわたりの利権を根絶することが、新政権の最重要課題の一つに位置付けられた。
そして、業による日本政治支配、大資本による日本政治支配の構造を打破する決定的な施策も提示された。それが、企業献金の全面禁止の方針である。この方針は2009年3月に小沢一郎氏が明示したものである。
「政治とカネ」の問題がクローズアップされるなかで、「政治とカネ」問題の本質である「企業献金」を全面的に禁止するという、画期的な路線が提示されたのである。
しかし、樹立された新政権=鳩山由紀夫政権はわずか8カ月半の短期日で終焉してしまった。日本政治の根幹を刷新する、まさに「維新」の名にふさわしい大改革が断行されようとしたが、この動きに対して、既得権益勢力がまさに「目的のためには手段を択ばない」激しい抵抗、総攻撃を展開したからである。
その象徴が、悪名高い「小沢一郎氏裁判事件」である。無実潔白の政治を標的に、卑劣な人物破壊工作が展開された。
「小沢一郎議員を支援する会」が追求してきたのは、この不当な権力の行使、既得権勢力の悪行の実態を暴き、小沢一郎氏とその関係者の名誉を守るとともに、日本の民主主義を守り抜くことであった。鳩山政権が潰されて樹立された菅直人政権は「主権者政権」ではない。旧来の支配者である「米官業トライアングル」が政治権力を奪還した「旧政復古政権」である。
だからこそ、菅直人氏は政権発足に際して、普天間の辺野古移設を確約し、「シロアリ退治なき消費税増税」の方針を示したのである。菅直人政権の樹立の実態とは「主権者政権」を潰し、「旧政復古政権」を樹立する党内クーデターの遂行だったのである。
菅直人政権を継いだ野田佳彦政権も、菅直人政権とまったく同類の、旧制復古政権であった。野田佳彦氏は、「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」と主権者に宣言しておきながら、「シロアリ退治なき消費税増税」に突き進んだ。
菅直人氏と野田佳彦氏は主権者政権を破壊し、日本政治を旧制に復古させた、文字通りのA級戦犯である。
※続きは13日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第862号「弱肉強食主義・軍国主義VS共生主義・平和主義」で。
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