11.問われる社外取締役の責任
◆「社外取締役」とは、過去・現在を通じて、その会社や子会社の代表取締役、業務執行取締役、従業員になった経験がない取締役ということになる。上場会社に就職して、係長→課長→部長から取締役への階段を夢見ても、みずほFGのように委員会設置会社になれば、内部から取締役に昇格できるのはごくわずかで、過半数を社外取締役が占めることになる。
社外取締役が設置される目的は、(1)経営に外の風を入れてアドバイスを受けたい、(2)専門家の意見を経営に反映させたい、などが挙げられる。
そのため一般的に委員会設置会社は、その目的にふさわしい公認会計士や弁護士、元コンサルティング会社パートナーなどから社外取締役を選任しているが、みずほDGの場合は不祥事対策として社外取締役を活用することが主な目的となる。
確かに不祥事の再発防止の観点からいえば、社外取締役を置くことで他の取締役の業務執行の監督や経営・責任の透明化が期待できるというメリットはあるが、なぜわざわざ『社外の人間』を取締役として選任しなければならないのかとの疑問を抱くのは、筆者だけだろうか。
◆法律上では、取締役全員が代表取締役などの業務執行を監督するだけでなく、取締役相互に善管義務違反がないかをチェックすることが求められてはいる。
しかし社内の出世街道を上がってきた『社内』取締役にとって、代表取締役社長は上司であり、かつ取締役の任命権を有しているため、その意向には逆らえないというのが本音だろう。
みずほFGの場合はその逆で、取締役は旧第一勧銀、旧富士銀、旧日本興銀三行によるバランス人事の上に成り立っており、その頂点である社長も同様である。そのためたとえ社長であっても社内における地位は盤石ではなく、思うようにリーダーシップを発揮できなかったために、不祥事が起こったと言われている。
佐藤社長が1月23日、「4月1日付で兼務するみずほ銀行頭取を辞任し、自らは代表権のない取締役に退く。みずほFG社長として6月に委員会設置会社に移行するために、不退転の決意を社外並びに全社員に示す」と述べた背景には、今回の不祥事を『奇貨居くべし』の通り、委員会設置会社への移行こそが、自分自身が生き残れるただ一つの道と決断したからに他ならないように思われる。
佐藤社長は社外取締役を増やせば、『取締役の不正・不当な行為の指摘や、不祥事のすみやかな報告も十分期待できる』ことを大義名分としているが、ある金融関係者は「佐藤社長は過半に近い社外取締役を味方に引き込めば、旧三行を意識することなく実権を握ることができるとの強かな読みがあるのではないか」と語っている。
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