台湾プロ野球のLamigoモンキーズは、日本人・正田樹投手の解雇を発表した。正田投手は2009年、2010年と台湾プレーし、日本へ帰国。今年、台湾へ戻り、8試合に登板、2勝2敗で防御率4.81だった。
3月にシーズンが開幕したばかりで2勝2敗・・・「そんなに成績は悪くないだろう?」と不思議に思う人も少なくないだろう。しかし、それが、台湾球界における「外国人選手への扱い」の現状だ。かつて台湾チームを率いた日本人指導者は「台湾のフロント陣は『日本』よりも『アメリカ』『中南米』思考が強い。仮に同じ成績なら日本人の方を落とすだろう」と指摘する。日本人は台湾を「親日国家」だと思っているが、それはあくまで台湾愛好家の「先入観」と、日本でビジネスをしている台湾人の「レトリック」に過ぎない。台湾プロ野球の助っ人補強においては「日本びいき」などあるはずもなく、パワーに勝るアメリカ、中南米系を優先。正田選手を解雇したLamigoは、早速、アメリカ人左腕メリット投手を獲得する見通しだ。
台湾は、日本プロ野球とは違って「月俸制」。外国人選手によっては「2カ月単位」の契約を結ぶ選手もいるが、いくら代理人を通してもそれ以上の長い期間の契約はなかなか結べないのが通例だ。一部の選手の年俸が「異常につり上がった状態」の日本球界に比べると、台湾プロ野球選手の賃金はかなり低い。月俸制、ケガをすれば終わり、八百長の疑いをかけられてしまうワナ・・・、台湾人選手にとってもプロ野球界が「優遇された環境」とは言いがたい。かつては代表に選ばれて五輪等の国際大会で好成績を収めれば兵役免除というメリットもあったが、現在は兵役そのものが軽減化しており、野球を生業にすること、野球に一生懸命になるということ自体の、土壌が少なくなっている。「プロ野球選手になりたい」などという子どもや若者の比率はかなり低いという。
台湾チームのあるコーチによると、昨今の日本球界の飽和もあり、戦力外通告された日本人選手の台湾球界への売り込みも増加傾向と言う。しかし、日本人はほとんど採用されない。仮に入団しても「故障すればオワリ」という緊迫感、バスで数時間かけての球場までの移動、ナイター終了後、バスで地元まで戻り、帰宅は深夜になるという「日本時代ではあり得なかった環境」で、環境に萎えてしまう選手もいると言う。
かつて台湾球界で数カ月間在籍しプレーしたある日本人野手は「台湾の環境はきつかった。台湾ではもうやりたくない」と振り返った。一部の台湾人選手は「台湾球界に在籍するくらいなら、アメリカで浪人した方がマシ」と話している。
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