12.まとめ
(1)本来社外取締役を選任する目的は、社外取締役の意見を社内の取締役が真摯に受け止めるという新たな企業文化の土壌を構築できるかにかかっており、何よりも重要なのは、そうした企業統治(ガバナンス)の風土が定着しているかどうかである。
みずほFGの委員会設置会社への移行は、今までの悪しき伝統である旧三行のバランスを崩すことに力点が置かれているものの、『屋上屋を架す』感は免れず、今後不祥事が起こらないという保証はないように思える。
ここで気付くのは、みずほFG傘下のみずほ銀行以外の三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行のメガバンクでは、公認会計士や弁護士、元損保会社役員、元コンサルティング会社パートナーなどを社外取締役に選任はしているがFGではなく、また委員会設置会社への移行についても消極的である。
むしろみずほFGを含め、フィナンシャルグループ(FG)を組成した銀行には、一本化できない要因を抱えていると言えそうだ。
(2)九州・山口においても、ふくおかFGが財務内容の悪い熊本銀行、親和銀行を吸収合併するためFGの道を選んだ。また山口銀行も山口FGを組成したのは、頭取交代劇を当局に安堵してもらうために、財務内容の悪いもみじ銀行を傘下に持つことになったが、吸収合併すれば再度取締役会で頭取交代劇が起きることも懸念して、FGを選択したとも言われている。
そのなかで西日本シティ銀行は、メガバンクの三菱銀行が東京銀行に続き、UFJ銀行を吸収合併したのと同じように、高千穂銀行の吸収合併に続き、財務内容の悪い福岡シティ銀行・長崎銀行を吸収はしたものの、FGを組成していない。その目的は、あくまでも銀行本体が主体となって一体的に経営管理する体制を貫いているからだ。
取引先からは、FGからコントロールされる銀行より、銀行本体が主体となって関連会社を含めてコントロールする方が、銀行の顔が良く見えて良いとの話も聞こえてくる。
みずほFGはいよいよこの6月に委員会設置会社に移行する。取締役会議長に外部から大田弘子氏を選んだ。そして新たに3人の社外取締役選任し、社内取締役7名、社外取締役6名の体制を整えて、新生みずほFGがスタートすることになる。
大切なのは社外取締役の意見を社内の取締役が真摯に受け止めるという新たな企業文化を育むことが大切であり、社外取締役であってもいうべきことはきちんと言うことが求められている。何よりも重要なのは、そうした企業統治が株主のために良いかどうかであり、銀行を選択するのはあくまでも顧客であることを肝に銘じた社内体制の確立こそが急務と言えよう。
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