<KADOKAWAとドワンゴが経営統合した>
新聞報道によると、「角川書店」で知られ、アニメや映画製作などコンテンツ関連事業を幅広く手掛ける「KADOKAWA」と動画配信サイト「ニコニコ動画」を運営する「ドワンゴ」は、ことし10月に経営統合することになった。
「KADOKAWA」と「ドワンゴ」は14日、それぞれ取締役会を開き、両社が経営統合することを決めた。ことし10月には新たな持ち株会社、「KADOKAWA・DOWANGO」を設立、傘下に現在の両社が子会社化する形で経営統合する。新会社の社長にKADOKAWAの佐藤辰男相談役が就任、会長にはドワンゴの川上量生会長がそれぞれ就任する。
発表前後の14日の株式市場では、KADOKAWA株が約9%、ドワンゴ株が約10%上昇、買いが殺到、一様の歓迎を見せた。
この経営統合に先立ち、KADOKAWAとドワンゴは2011年には資本提携、現在、KADOKAWAはドワンゴ株主の第2位で12.23%の株式を所有、一方ドワンゴはKADOKAWA株を2.7%所有している。その為、言わば、地ならしが済んでいる印象を持たれている。
今後、この経営統合によって両社は、KADOKAWAが手がけるアニメなどをニコニコ動画等で配信する事業を強化するほか、KADOKAWAが持つ海外の拠点とドワンゴのネット配信(約4,000万人の若者を中心とする会員)の技術を組み合わせて海外への展開を進めていく考えだ。こうした日本のアニメや漫画、ゲームなどを海外発信する取組みは、政府の進める「クール・ジャパン」戦略とも連動し期待が持たれている。現在、KADOKAWAの売り上げに占める海外比率は5%内外でしかない。
<「AOLタイムワーナー」失敗劇に学ぶ>
この経営統合に死角はないのか。どうしても頭をよぎるのは、米メディア大手タイムワーナーと米ネット大手AOLとの合併「AOLタイムワーナー」の大失敗である。同、合併も2000年1月の記者発表時点では、「世紀の合併」と騒がれたが、約10年後の2009年末に幕を閉じている。新旧メディアの合併は、机上の理論だけでは、なかなか上手く行かない。
「AOLタイムワーナー」失敗劇は、仲介をとったコンサルティング会社マッキンゼーの是非を含めて様々な意見があるが、大きく分けて3つぐらいに分かれる。
1つ目は、想定外の社会環境の変化である。このケースの場合は、合併直後にアメリカのITバブルが崩壊、AOLの時価総額が急落した。
2つ目は、企業文化(ケミストリー)の違いだ。おそらく、この点を突っ込まれるのを先取りしてのことと思うが、統合の会見でKADOKAWAの角川会長は「異質な両社だが企業文化は同じ」と発言している。
しかし、似たようなケースを経営側で経験した識者は「それこそ空論です。アメリカでさえ、その壁を乗り越えることができていないのです。メンタリティの点を考慮すると日本人にとっては、その100倍難しいと思います」と語り、さらに、「考えてみて下さい、人事交流が始まると、同じ社内に50代の部長と20代の部長が、場合によったら、ほぼ同年収で普通にいることになるのですよ」と付け加えた。
3つ目は、歴史あるKADOKAWAで長い年勤務した社員はもちろんだが、ドワンゴの社員も含めて、日本人は特に、頭では理解できても、感情だけは、一度帰属した出身母体にしがみつき離れられない傾向があるというものだ。
<"時間を金で買う"傾向が増えてきている>
「新旧メディアの統合」は、経営的には必要なことだ。しかし、色々な企業が買収を含めて、新旧メディアの統合に取り組み、成功例が少ないのはこれらの点が大きなネックになっているのかも知れない。
最後に面白い話を聞いた。「なぜ、KADOKAWAさんは自前でやらなかったのでしょうか。時間をかければ自前でできると思いますよ。最近は、できるのに自前でやらないで、"時間を金で買う"企業が増えています。しかし、経営統合の場合は異文化の調整に時間がかかるため、かえって遠回りになってしまうこともあります」と言うものだ。
このニュースは、引き続き、日本の「クール・ジャパン」戦略の成功も含めてウォッチしていきたい。
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