<先代のイズムに自分らしさを加味>
建築業界向けの防水剤やシーリング剤、外装材、塗料、副資材などを扱う(株)エフ・ティ・エス。2000年に創業したが、先代社長の福澤利弘氏が10年に急逝。後を受けた息子の裕士氏は、利弘氏がつくり上げた自由闊達でアットホームな社風を継承し、昨期は同社を年商30億円の大台に乗せた。
当初、引き継ぎもない突然の社長就任で経営について何もわからず、すべてが手探りの状態だった。そこでまず先代のイズムを踏襲しつつ、風通しの良い組織づくりを意識し、少しずつ自分らしさを加えていったという。
「イズムといってもそれが何なのか。はっきりした答えはわかりません。アットホームでコミュニケーションのある会社を目指していたことしか思い浮かびません。就任当初、最初に感じたことが情報の流れの悪さでした。ですから、組織づくりに集中し最終的に私まで正確な報告が上がるようにして情報の共有化を図りました。今振り返ると、それが良かったのかもしれません」と福澤社長は分析する。
自分らしさとは社内の調整・整備による業務の効率化で、組織体系では、本社内に「福岡支店」を開設して支店長を置き、新たに「営業推進部」を設けた。
福岡支店は本社機能とは別個に福岡エリアにおける営業の拠点にするもの。営業推進部は新規分野を含め今後の展開を考えた情報収集やデータ分析を行ない、ゆくゆくは責任ある部署に格上げしていくという。
<人材育成にも取り組む必要がある>
同社が扱う防水剤やシーリング剤は建築資材であり、市場は性能が良く、コストが安いものを求める傾向にある。しかし、現実問題としては耐用年数を伸ばす商品が発売されると、業界自体が首を絞めることになりかねない。
「今は人手不足ですから、性能が良く作業が簡素化される資材が望まれています。それで工期が短縮されれば、元請けにとってもありがたいでしょう。と同時に、防水作業は職人技を必要としますから、人材育成にも取り組まなければなりません。我々、資材の販売業者にとっても他人事ではありませんし、業界全体で考えていくべき問題だと思います」(福澤社長)。
新製品が次々と生まれ、施工技術も進歩した。資材を扱う企業としては、技術革新によって新たな課題にも直面することを認識しておかなければならない。
もっとも、建築資材はホームセンターやインターネットでも気軽に買えるようになってきた。とくにホームセンターはシンナーなどの溶剤まで扱い、作業用のハケやローラーといった副資材も格安で販売している。
しかも早朝から開店し、法人向けのカード会員を募集したりと、施工業者を意識した戦略が目立つ。現に福澤社長は宮崎支店時代、地元の大型ホームセンターで早朝に訪れるお客への「パンとコーヒーの無料サービス」を目の当たりにしたという。これは明らかに現場に行く途中に寄ってもらい、何か購入してもらおうという意図がうかがえる。
小売業の施工業者向け市場はまだまだ数%にしかおよばないため、同社を脅かす存在ではない。しかし、「専門知識をつけられると脅威だ」と福澤社長は自戒する。
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先代がつくったイズムを踏襲し、少しずつ自分らしさを加えて風通しの良い組織を維持する。社内コミュニケーションの円滑化と権限委譲で、自立した社員が育っている。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:福澤 裕士
所在地:福岡市博多区吉塚4-6-17
設 立:2000年3月
資本金:1,800万円
TEL:092-624-2938
URL:http://www.f-ts.co.jp/
<PROFILE>
福澤 裕士(ふくざわ・ゆうじ)
1978年4月、宮崎県生まれ。大学卒業後、2001年に(株)エフ・ティ・エスに入社。福岡・宮崎支店で営業後、父の急逝により、代表取締役に就任。父が築いたアットホーム的な社風を踏襲しつつ、福岡支店開設や社内整備などのカラーも打ち出す。
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