フジテレビが理化学研究所の女性をパロディにした番組を企画したことで波紋を呼んだ。話題になったとはいえ、彼女は「私人」だったので問題視されたが、パロディは「権力者」や「権力を持つ公人」をターゲットに行なわれるというのが世界各国での一定の「共通認識」と言える。
台湾には、まさに「パロディの王道」とも呼べる番組がかつて存在した。中天テレビで放送の「全民最大党」という番組だ。芸人・タレント数名が出てきて、そっくりメイクで国民党、民進党、親民党の主席や、大御所などに扮する。李登輝氏、陳水扁氏、馬英九氏、などは常連で、時にはオバマ氏や金正日氏、李春姫氏(朝鮮中央放送女性アナウンサー)、日本の天皇陛下すらパロディ化され登場したこともある。政治家のマネが主で、政治家に扮した芸人が演説調でブラックジョークや下世話なセリフを吐いたりするのが見所である。
日本の政治パロディは、20年以上前は、民放局でも放送されたことはあったが、最近はほぼ見なくなった。時折、芸人が「モノマネ」をするくらいで、政治的発言を茶化すというような「パロディ」の域までは踏み込んでいない。「ザ・ニュースペーパー」というコント集団がパロディを行なっているが、「舞台」での活動が多い。ただ「政治パロディ」は、どの国でも「放置」されているわけではない。「反権力」の象徴とされている表現手法なので、政権とメディアとのバランスや、国の情報界の雰囲気によっては抹消されたりもする。
「全民最大党」は「政治(報道)」に「お笑い(ユーモア)」を混ぜるという手法で、毎日放送されていた。有能で経験のある作家やブレーンが集結し、時には「LIVE」での放送もするほど、時事ネタの「新鮮さ」にこだわっていた。「中国」をネタに笑いを取るシーンもあり、反響や番組完成度は高く、台湾テレビのアカデミー賞「金鐘奨」も受賞している。しかし、政権が国民党に移り揺るぎない状態になり、さらに大陸と急速に歩み寄った2012年9月、「全民最大党」は幕を閉じた。台湾人視聴者からは「大陸からの圧力、国民党からの圧力に屈した」と、放送終了を惜しむ声が多く聞かれた。
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