5月9日、財務省は国債の残高が2013年度末で853兆7,636億円となったことを発表した。今年4月の人口推計1億2,714万人をもとにすれば、国民1人あたりおよそ672万円の借金を抱えている計算。しかし、「国民1人あたりの借金」と言われているものはこれだけではない。私たちが暮らす都道府県、そして市町村の地方債(県債・市町村債)が加算されなければならないのだ。それらを含め、「私たちの借金」はいくらになるのか――。NET-IBが、九州地方7県(北部4県、南部3県に分ける)、そして九州内の3政令指定都市の地方債の残高の現状について検証した。
そもそも地方債は、公共施設の建設など、一時的に多額の費用がかかる場合に発行する公債。その返済を長期間に分割して行なうことによって財政負担を世代間で均一にする、という目的がある。
注意しておきたいのが、臨時財政対策債(以下、臨財債)の存在。臨財債とは、国の地方交付税交付金の原資が不足したために、補填として地方自治体に地方債を発行させ、その分について後年度の地方交付税で措置するというもの。もともと2001~03年度までの3年間の臨時的な措置の予定だったが、度重なる延長を経て、現在なお続いている。臨財債は地方債でありながら、地方交付税の代替。したがって、出てきたカネは一般財源扱いになる。つまり、用途が限定されない。地方債残高のなかでこの臨財債が占める割合が、年々上昇しているという実態がある。
では、九州北部4県(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県)の県債状況から見ていこう。以下の表は、各県の2010~12年度の県債残高、そのうち臨財債の残高と県債残高全体のなかでの割合、そして年度ごとの人口をもとに1人当たりの県債残高を算出したものである。
福岡県の県債残高は12年度決算で3兆2,189億円。前年度比で1,507億円増、4.91%増となっている。臨財債残高をみると、8,976億円(前年度比1,260億円増、16.3%増)となっており、県債残高全体の38.7%を占めるほどになっている。県民1人当たりの県債残高は63.3万円。
佐賀県の12年度県債残高は7,203億円で、前年度比138億円増、2.0%増。臨財債残高は2,826億円(前年度比219億円増、8.4%増)で、こちらもまた県債残高全体の39.2%と、高い割合を占める。県民1人当たりの県債残高は85.4万円。
長崎県の県債残高は、12年度決算で1兆2,097億円。前年度比271億円増、2.3%増となっている。臨財債残高は3,567億円(前年度比374億円増、11.7%増)。県民1人当たりの県債残高は85.9万円となっている。
熊本県の県債残高は、12年度決算で1兆5,299億円、前年度比259億円増、1.7%増。臨財債残高は3,764億円(前年度比469億円増、14.2%増)で、県民1人当たりの県債残高は84.7万円である。
各県とも、県債残高は増加傾向にあり、なかでも臨財債残高の占める割合の上昇率が高いといえる。九州北部4県で、佐賀県、長崎県、熊本県の県民1人当たりの県債残高が85万円前後と並んでいる一方、福岡県では県民1人に換算して63.3万円と比較的少ない。福岡県の県債残高自体はずば抜けて多いのだが、人口の多さが負担を軽くしている形だ。
次回は、大分県、宮崎県、鹿児島県の九州南部3県の県債残高の状況を見ていく。
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