<大手企業は天下無敵か>
世界市場のなかで、韓国の大手企業の位置づけはどのようなものであろうか。その韓国企業は、中国の低賃金と日本の高い技術に挟まれた"サンドイッチ経済"であるとよく言われた。
ところで中国の技術水準は、果たして韓国より低いだろうか。全然違う。中国は、自国の技術で核兵器、戦闘機なども開発していて、宇宙にロケットの発射にも成功している。最近では、航空母艦もつくっている。商業用技術は少し遅れているかもしれないが、基礎科学技術においては、世界のトップレベルである。中国は、部品・素材の輸出の面においては、世界1位の国でもある。部品素材産業は、基礎技術なしには成り立たない。韓国が、日本との間でいつも貿易赤字になっているのも、部品・素材の輸入が大きな原因である。中国に進出している韓国企業が使っている部品素材のうち、韓国製のものの割合は、2006年度には40%であったが、今は20%を下回っている。それほど中国製の部品と素材が良くなったという証左である。
商業用技術は、現在は韓国は中国より少しアドバンテージがあるが、中国は技術開発に十数年かかるような技術は、その技術を保有している企業を買収することによって、キャッチアップを図ろうとしている。中国の外国企業の買収金額は、07年度に136億ドルであったが、11年度には732億ドルに大幅増加している。これとともに、中国企業の競争力も急上昇している。
海外での企業競争は、凌ぎを削っている。05年頃までは、ノキアは携帯電話の王者であった。その当時は、ノキアの役員に面会することはなかなか難しかったという。だが、そのような会社も、スマートフォンの出現により、一瞬にして市場から存在感を失ってしまった。モトローラもブラックベリーも、同じような憂き目に遭っている。
三星がソニーを追い越したのは、奇跡みたいなことであった。ソニーが他の事業に力を入れている間に、三星が集中投資をしたのが、功を奏したようだ。
1982年度に、ソニーの会長に就任した大賀典雄氏は、東京藝術大学音楽学部を卒業したオペラ歌手出身で、世界的な名指揮者とも懇意にしていたとのことだ。そのようなバッググラウンドを持った大賀会長は、脱・電子化を図りながら、映画、音楽事業に力を入れるようになった。初期にはCD事業とPlaystation事業が大成功を収めたが、コンテンツに比べて技術は軽視される風潮があり、LCDなどの新しい技術環境の変化にうまく対応することができなかった。
しかし、今の三星も、いつ中国企業に追い越されて「第二のソニー」のような運命をたどるかは、誰も予測できない。アメリカの代表的な株価指数であるダウ・ジョーンズは、アメリカを代表する優良企業30社で構成されているが、過去100年間で存続している企業はGE1社だけである。
GEは、ジャック・ウェルチ氏が会長職に就いた80年以降、一流ではない部署は容赦なくリストラをした。GEは15年間で400ラインをリストラしている。ちゃんと利益を出していても、1位ではない部分をリストラして環境の変化に敏感に対応したのが、GEが唯一100年も存続した理由であると指摘している。
<産業空洞化>
深刻な高齢化社会を迎えつつある日本は、ずいぶん前から企業の海外移転による産業空洞化が始まっている。過去20年間で、税金収入が25%減少したくらいである。日本の自動車会社は、ずっと前から海外進出によって競争力を保っているし、今現在、日本の経済を引っ張っている企業のほとんどは、その間、海外投資に熱心だった企業である。海外投資に熱心であった日本の7大総合商社が海外子会社から受け取った配当金は、11年に過去最大の1兆円にも達している。今は、海外投資が日本の競争力を維持させ、日本を支える一部になっていると言っても過言ではない。
韓国もこのような意味においては、日本を追いかけている。経済民主化ではなくても、海外進出が増えている。これは、韓国内の経済環境が芳しくないという証拠でもある。
自動車の場合、14年度の海外生産の割合は13.4%だったが、12年度に50%を上回っている。韓国内の生産能力はそのままであるが、海外の設備投資は増えている。韓国内では生産性も低いし、新規の設備投資には労働組合の同意が必要であるため、国内投資はしにくくなっている。
現代自動車の場合、同じ設備で国内工場の生産台数は、外国工場の6割程度であるとのことだ。生産性も低いし、1人当たりの人件費も1,000万円を上回っているのに、頻繁にストもあるので、国内投資をするメリットがあまりないのだ。
携帯電話の場合には、10年度の海外生産の割合は16%に過ぎなかったが、わずか2年後である12年度には、海外生産の割合は80%になっている。
このように海外企業の韓国への投資の増加に比べて、韓国企業の海外投資が急激に増えてきており、この現象が継続すれば、産業の空洞化を招くことになるだろう。
≪ (前) |
※記事へのご意見はこちら