中華航空の増便などで、台湾からの観光客は関東圏、関西圏、北海道のみならず「九州圏」も増えてきた。しかし、「九州」や「福岡」について知る台湾人が多くなればなるほど「福岡市内は寄らなくていい!」という注文が台湾旅行代理店に対して増えてきたという。旅行代理店側も「福岡空港」に到着した後、福岡市を素通りして九州内の観光地を巡り、福岡空港経由で台湾に戻るというルートを作り始めた。
福岡市や福岡県は交通の便利さをアピールし、福岡への観光客誘致を図っているが、実際に市民の間にも「福岡市内に観光地はない」という認識は少なくない。福岡市では「キャナルシティ」「天神」「福岡タワー」が候補に挙がるが、いずれも「市民の余暇でのショッピング」には適していても、海外からの観光客を呼ぶには不足感が否めない。「福岡タワー」は、ただ金を払って昇るだけ。「ドーム」は、器は大きいが野球の試合そのものが興味を持たれておらず、ただ「広い」というのを確かめに行くようなものだ。「興味のない試合を何時間も見ないといけないのは苦痛だからドームには行きたくない」とある台湾人観光客が話したという。
夜の「屋台」は閉鎖的で外国人向きではない。県内に広げても、「門司港」クラスの港なら台湾にもあるし、「太宰府天満宮」は参拝だけ(参拝する寺院は台湾にもある)。「柳川川下り」も小さい船に乗ってじっとしているだけ・・・。福岡県内にある「観光地」といわれる場所それぞれが、わざわざ国を渡って来て短い期間で観光する人に案内する程度のものではない、ということだ。その状況で行政関係者が「福岡は観光に適した都市です」と言い続けることは「詐欺師」呼ばわりされかねないスレスレの行為であるとも言える。
日本人客は性格上「我慢」することも多いが、比較的要求をストレートに伝え、インターネットでの調査力の高い台湾人は、旅行後にその他の地域情報とも合わせ「キャナルシティはただのショッピングモール。台北にはもっとちゃんとしたショッピングモールがあり行く必要はなかった!」「福岡市内を巡る時間は無駄、九州の他の場所に行くべきだった!」と旅行代理店にクレームを出しているという。競争の激しい旅行業界で生き残りをかけ代理店側も「最終日は福岡市内のホテルに泊まり、朝、福岡空港から台湾へ帰国」というこれまでの「定番」を崩し始めていると言う。福岡県内の地味な「観光地」は無視し、「ハウステンボス」「阿蘇山」「別府温泉」「鹿児島篤姫ゆかりの地」などを大胆に巡り、そして、福岡は「空港」だけという「効率的」なルートを刻み始めた。福岡発の昼以降の便が増えたことにより、台湾人観光客にとっては、より「福岡市内を無視しやすい」状況が整ったことになる。
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