ASEANへの中堅中小企業の海外進出が「受け身」の進出から積極・自発的な進出に進化してきている。拠点やターゲットをどこに絞るかが経営者の悩みだ。日本企業の海外進出、業務提携、販社の設立などを支援しているエーアイエスジャパン(株)の上原正之代表が5月22日、海外進出について福岡市で講演した。上原氏は、シンガポールを活用したアジアへの戦略的進出の意義を力説。講演会では、新興諸国の法規制に詳しい信國篤慶弁護士(弁護士法人森・濱田松本法律事務所福岡オフィス)が、進出にあたっての各国の法制度について解説した。
主催は、(株)データ・マックスで、会場は、同本社セミナー室。毎月開催しているIBC(情報ビジネスクラブ)の例会で、ASEANへの進出や販路拡大を検討している経営者らが出席し、「海外進出のWHY(なぜ)とHOW(どうやって)」について熱心に耳を傾けた。
上原氏は、三菱商事(株)で食品原料・加工食品輸出入取引、海外投資先の製造会社の営業支援、各種卸小売の販売会社の販売チャンネル構築に従事。2008年に、日本企業と海外企業をつなぎ、海外でのビジネスマッチングを支援するため、シンガポールにエーアイエスを設立。上原氏は普段、シンガポール本社で指揮をとっている。今回、帰国するにあたって、エヌビーエス(株)の石橋一海代表の尽力によって、IBCでの講演が実現した。
上原氏は、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、カンボジアなどASEAN諸国への海外進出、市場開拓の動きがめざましいなか、現地法人や提携先としてシンガポールを拠点にするメリットについて、各国の外資資本比率などの法規制を比較しながら明らかにした。また、進出の3パターン(独資企業、M&A、提携)ごとの現地トラブルの特徴に触れながら、進出リスク対策を紹介。「自社技術やノウハウの流出は、『独資だから大丈夫』ではない。提携、とくに『弱い提携』という進出形態も活用のしがいがある」と述べた。
海外進出の理由では、人口減の国内市場の縮小対策、新興諸国市場の開拓・拡大、第3国への輸出が急上昇していることを挙げる。日本市場・企業が「成熟市場」「成熟期」だからこそ生まれるビジネスチャンスの事例を紹介し、「自らの強み、スピーディ・低リスク、現地パートナーの見極め、専門家の上手な活用」が成功の秘訣だと語った。
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