民主党内で、「海江田降ろし」が動き出している。5月13日には、玄葉光一郎元外相と安住淳元財相らが赤坂の中華料理店で開いた会合では、早期に代表選を実施すべきとの声が噴出。ついには、代表選出馬に必要な推薦人の数の緩和を求める署名活動まで実施されている。
22日、民主党議員の各事務所に署名用紙が配られた。岸本周平氏を中心に、民主党の当選2回までの衆院議員6名が名前を連ねる。1回当選の寺島義幸氏を除く5名は、「ミラクル5」と呼ばれる。民主党が大苦戦した2012年の衆院選で生き残った人たちだ。
現行では、民主党の代表選に出ようとすると、20名から25名の党内の国会議員の推薦が必要だ。署名活動は、それを「10名以上」に緩和しようと呼びかけるものだ。現在の民主党の議員は、衆院が56名、参院が59名の合計115名。最盛期の4分の1にまで減少してしまったため、代表選出馬には推薦人の人数が高いハードルになっている。
岸本氏らは署名活動を「党内の活性化のため」と主張するが、「海江田降ろし」の1つであることは間違いない。党内にリコール規定がない限り、代表選はあり得ない。よって、今すぐに推薦人の数を変える必要はないからだ。
海江田氏は昨年7月26日、両院議員総会で「統一地方選の準備が本格化する1年後までに目に見える成果が出ていなければ、恥を忍んで代表(続投)をお願いすることはない」と述べた。だが、最近では「党立て直しへの強い思いは今も変わっていない」(今年5月12日)「辞任を考えたことはない」(同5月18日)と続投を表明している。
海江田氏代表になって以降も、民主党が活気づいたわけではない。依然として「支持率5%政党」であり、国会内が自民党が圧倒的に強い「1強多弱」であることは変わりない。
それでも海江田氏が強気になっている理由は、強力なライバルがいないことだ。所詮、野党の党首のなり手はいないと、たかをくくっているのだろう。
実際のところ、玄葉氏にしろ安住氏にしろ、「海江田降ろし」の中心になっている人たちは、選挙の顔にはなりきれない。彼らは政治的キャリアは海江田氏と変わらないものの、「小物感」が否めず、全国的な知名度はいまいちだからだ。
そこで担ぎ出されようとしているのが、代表の経験もある岡田克也氏だ。
野田政権時に副総理も務めた岡田氏は、全国的な知名度はある。だが、側近がいないという致命的な欠点がある。
思い出されるのは09年5月16日の民主党代表選だ。出馬したのは岡田氏と鳩山由紀夫氏の2名だった。結果は124票対95票で、鳩山氏が勝利した。そしてこの後の衆院選挙で民主党が圧勝し、鳩山氏が首相に就任する。言い換えれば、岡田氏は首相の座を逃したわけだが、どうして負けたのか。
もちろん当時の岡田氏には、あまり勝機がなかった。1996年に旧民主党を創設したのは鳩山氏だ。結党時は「首相にしたいナンバーワン」だった菅直人氏と共同代表を務めたが、結党に必要な資金を提供したのは鳩山家だった。上昇機運に乗っていた当時の民主党には、「鳩山家」のブランドが利いていた。
それに対し、岡田氏側は元気がなかった。代表選は衆院と参院から1人ずつ「応援団」が登壇したが、岡田氏の衆院側の応援は、なぜか手塚仁雄氏だった。岡田氏と手塚氏の接点はほとんどない。しかも当時、手塚氏は落選中の身だったのだ。
手塚氏の選挙区の一部である目黒区で区議を務めている芸能ジャーナリストの須藤甚一郎氏は、同年5月18日付けのブログでこう書いている。
「いちばん解せないのは、応援演説で岡田陣営は、落選中の元民主党衆院議員の手塚仁雄にやらせたことだよ。ほかに応援演説をするやつはいなかったのか」(原文ママ)。
須藤氏の指摘は正しいと言える。というのも、このときの手塚氏の「応援演説」は決して岡田氏を応援するものではなかったからだ。彼の演説の中心は、落選中の自分の不遇の愚痴であった。いったい何のために応援演説を買って出たのか。
「手塚氏を押し込んだのは、手塚氏と仲が良い蓮舫氏。手塚氏は蓮舫氏を政界に誘った人物。手塚氏を目立たせて、ポイントを稼がせようという魂胆だった。2人は持ちつ持たれつの関係だから」。
民主党の関係者はこう明かす。
ちなみに当時の手塚氏は、前職だったにもかかわらず、第一次公認から漏れていた。幹事長だった小沢一郎氏が外したのだ。
「手塚氏の選挙区には、小沢氏の東京の自宅がある。小沢邸のすぐ近くで開かれた集会に手塚氏が欠席したことがあった。小沢氏は全国に情報網を持っていたし、もともと手塚氏は地道な活動を嫌がっていたことも知っていた。これが小沢氏の逆鱗に触れ、一次公認は見送りになった」。
当時を知る民主党関係者は、こう明かす。
今回も岡田氏を擁立しようと、蓮舫氏らが蠢いているという話だ。新聞は「野田政権時に岡田氏が副総理として野田首相を支えたから、野田グループには恩義がある」と報じているが、100%そうとは言えまい。しかも彼女は次回の参院選で改選。その日まであと2年余りとなった。
海江田氏を降ろす前に、議席から降ろすべき政治家がいるということか――。
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