韓国では旅客船沈没事故の後も、地下鉄衝突、さらには高層マンションの倒壊など事故が頻発している。「パク・クネ大統領が招いたタタリだ!」と過激に煽る声もある一方で、「これまで数十年の社会構造が招いた歪み」と捉える風潮も少なくない。
韓国はこの数十年、さまざまな戦争を経験してきた。日本で「戦後」と言えば「第2次世界大戦後」を意味するが、韓国では「第2次大戦」に加え、「朝鮮戦争」も起き、現在でも北朝鮮との間の「有事」に備えている。
そのなかで「日本の植民地時代」は大きな影を落としており、ある韓国の事情通によると、「韓国は『日本に勝とう!』をスローガンにここまで頑張ってきた。安全面よりも『経済』を優先した。韓国では『2020年に国民総生産で日本を上回る』という予想も出たくらいだ。
しかし、事故の連発で『行き過ぎた経済盲信』を思い知らされた。立ち止まらなければならない時期」と話す。
韓国では経済を優先するあまり「緩和」が何より優先されてきた。セウォル号でも過積載を隠すために、船舶会社から行政(公務員)に対して賄賂が送られていたという報道もある。
今、韓国では「公務員」に対して厳しい目が向けられている。「賄賂を受け取っていたことで高校生を死に追いやった」「ずさんな管理でさまざまな事故を誘発させた」など、批判さまざま。沈没事故の怒りムードで、役所などでは送別会などの宴会の禁止、「家でも酒を飲むな」と言われている。公務員は、日頃の行動すら国民から厳しい目で見張られている状態だと言う。
韓国では現在、ほとんどの自治体の庁舎に、セウォル号事故の「弔問所」「献花台」が設けられているという。市民の声を受けてのものだが、以前、設置に関しても、国の安全行政省から「設けないでほしい」という通達が秘密裏に出されたが、その情報が漏れて報じられたことで、国や公務員に対する批判はさらに強まったという。
韓国では5月3日~6日までがゴールデンウイーク、多くの国民は「行楽」よりも各自治体の役所に「弔問」をすることで時間を過ごしたそうだ。
事情を深く知らない外国人観光客が「長い行列」に誘われ「美味しいグルメでもあるのだろうか」と並んだところ、「献花台だった」というのは最近の韓国都市部でよくある話。韓国を観光する旅行客は行動に注意したい。
また、平日でも早起きして役所に行き弔問して出勤をする韓国人も多い。朝7時から夜9時までだった弔問所は、深夜に訪れる人の声を優先し「24時間」開けていると言う。公費で菊の花が1,000本以上用意され、訪れた人は菊を捧げて、「安全」を祈念しているという。
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