<森ビルのねらいは>
2002年10月、「環状第2号線新橋•虎ノ門地区第二種市街地再開発事業」が策定された。都心と臨海部を結ぶ主要な幹線道路である環状2号線のうち、新橋・虎ノ門区間の整備が目的だ。
事業主は東京都で、再開発の遂行にあたってⅠ~Ⅲの3つの街区を設け、特定建築者を公募し、住居とオフィス機能を兼ね備えたビル3棟を建築する計画を立てた。それぞれのビルに地権者が「権利床」を取得して入居し、「保留床」には新たなテナントや住民が入居する。
この地域に限らず、街路整備で大きな課題となるのが、立ち退きを余儀なくされる地権者(一般居住者など)への対応。とくに新橋・虎ノ門周辺は、日本のなかでも一等地に当たり、地元に残ることを希望する地権者が多かった。そこで用いられたのが、再開発手法による地権者の移転先の確保だ。
単純化していうと、事業区域内に1億円の土地・建物等資産を有した地権者が、1億円相当分の再開発ビルの床を取得する。この床を「権利床」という。それ以外の残った床を「保留床」といい、再開発事業の施行者はこの「保留床」を分譲処分し、国からの補助金などを除く事業費のすべてを賄うことになる。
3棟のうち、最後にオープンする1棟が、Ⅲ街区に当たるエリアの地権者でもある、六本木ヒルズで有名な森ビルが手がける「虎ノ門ヒルズ」。テナントにハイアット系のホテル「アンダース東京」が入るため、ホテルオークラ東京との競争が激しくなると予想されている。
このビルを建設するにあたり、都は「立体道路制度」を活用。建物の下にトンネルが通るという、再開発のなかでも数少ない事例の1つとなった。
虎ノ門ヒルズの誕生で、六本木から虎ノ門一帯の今後の再開発は、森ビルが大きな役割を果たしていくといっても過言ではない。同社は、六本木ヒルズ、赤坂のアークヒルズ、虎ノ門ヒルズという、3つのヒルズエリアを結び付けた東京の「国際新都心」エリア創出を目論む。
また、その先に、虎ノ門と新橋の間の地区の再開発を見据える。
虎ノ門ヒルズの西側、虎の門病院、国立印刷局本局・虎の門工場、共同通信会館がある虎ノ門2丁目は、UR都市機構が中心となって、総延床面積は約24万4,000m2、最高高さ179mのオフィスビルや虎の門病院の新病院が建設される再開発計画が持ち上がっている。2023年度には全体供用開始される予定。
次の再開発のスポットとして注目されるのが、新橋や汐留に向かう虎ノ門ヒルズの東側だ。この一帯は高度経済成長期に開発が進んだが、比較的低層の建物が軒を連ねている。東京都の計画は、あくまで虎ノ門から新橋へと向かう道路という一本の「線」の整備が中心だったのに対し、森ビルはどうやら、環状2号線を基軸にこの一帯を「面」として捉え、高層ビルの建設などで再開発の起爆剤としたい考えのようだ。
13年から14年にかけて、再開発へ大きく舵が切られた六本木から虎ノ門のエリアは、今後風景が一変することが予想される。
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