(株)デリズ(本社:福岡市博多区)は、専門店のメニューを集めたカタログ「出前本」を発刊し、福岡・東京を中心に「うまい!」専門店料理をデリバリーする企業。同社は、海外に多数出店経験のあるワタミ(株)の子会社と合弁企業を設立し、2014年6月30日にグランドオープンする「イオンモールプノンペン」へ居食屋「和民」を出店する。同社代表取締役の井土朋厚氏に、カンボジア進出への意気込みを聞いた。
――カンボジアへ支援を行なおうと思ったきっかけを教えてください。
井土氏(以下、敬称略) 私が尊敬している大久保秀夫氏の言葉に感銘を受けたからでしょうか。大久保さんは(株)フォーバルの創業者であると同時に、カンボジア国際教育支援基金(CIESF)理事長でもいらっしゃいます。フォーバルが開催している勉強会に参加した際に大久保さんのおっしゃった「経営者は自分の利益ばかりを考えるのではなく社会に貢献しなさい。社会貢献を事業としてやっていけるような仕組みを作りなさい」という言葉が胸にストンと落ちた。それで、自分もやってみようと思いました。
まずは飢餓について調べました。現在の飢餓人口は約10億人で、7人に1人が飢餓の状態にあると言われています。飢餓が原因で5秒間に1人が命を落としている現状を知り、胸が詰まりましたね。「食を通した社会貢献をしたい」と強く思いました。しかし、支援をしようにも、行ったこともないのでは話になりません。まずは現地の状況を知るためにカンボジアへ渡りました。
孤児院に寄付をしようと思ったのですが、詳しい話を聞いてみると、孤児院にいる子どもの多くは親がいないわけではないことを知りました。親が育てられない子どもたちを孤児院が面倒を見ているという現状です。「これは考えていたのと何か違う」と正直思いましたね。そこで支援に対してやりきれない気持ちになってしまったのも事実です。
――そこで支援を諦めてしまわなかったのはなぜですか。
井土 ワタミ(株)の渡邉美樹氏との出会いがあったからです。「NPO法人School Aid Japan」(現在の「公益財団法人School Aid Japan」)の代表理事を務める渡邉美樹氏は、2001年3月からカンボジア・ネパール・バングラデシュの学校建設や孤児院運営を行なっており、教育支援という分野で私の遥か先を行っているように思えました。しかし、そんな渡邉氏にも憂いがありました。それは、学校を建てても、家が貧しいために学校に通えない子どもたちがいるということ。その子どもたちを救うにはどうしたら良いか渡邉氏に尋ねました。その問いに対して、渡邉氏は「お米があれば救える」と答えました。その言葉が私の支援への熱意を蘇らせてくれたのです。だから、注文を受けるごとにお茶碗1杯分のお米を提供するという「お茶碗1杯プロジェクト」を開始しました。我が社が目指しているのは、世界一ありがとうを集めるデリバリー企業です。デリバリーでいただいた「ありがとう」から飢餓に苦しむカンボジアの人々の「ありがとう」が生まれる、こんなに素晴らしいことはないと思いました。
しかし、その一方でこれでは飢餓に苦しむ10億人を救えないことも事実として受けとめなくてはなりませんでした。私は魚をあげるのではなく、そこに川を作り、釣り方を教えてあげたい。そうでなければ意味がありません。私にできることは、本物の日本食をカンボジアの人々に伝えることだと思いました。
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