<高齢者の自殺率が平均の4倍>
韓国の自殺率は、人口10万人当たり31名でOECD加盟国の中では1番高い。特筆すべきは、老人の自殺率が高い。70代の場合、10万人当たり84人、80代の場合には10万人当たりなんと123人で、平均自殺率の4倍にもなっている。自殺したいという衝動に駆られたことのある老人にその動機を聞いてみると、1番目が病気による苦痛、2番目が経済的な苦痛、その次が寂しさであった。
病気による苦痛も、寂しさも、突き詰めれば経済的な逼迫から起因するものであろうから、経済的な理由が1番大きいと言えるかもしれない。とにかく老人の貧困問題は深刻で、大きな社会問題に発展する可能性が高い。
所得の格差を表す指標のなかでジニ係数というのがある。人口の分布と所得の分布との関係を表す数値で、ジニ係数がゼロであれば、所得格差がほとんど存在しないということだ。数値が大きければ大きいほど、格差が開いているということになる。
韓国はジニ係数が0.31でOECD加盟国の平均水準である。しかし、年齢別に見ると、20代と30代は0.27であるに比べて、60代以上になると、0.4を超えている。年齢を重ねれば重ねるほど、貧富の格差はひどくなる。このような現象は、韓国の消費パターンを考慮すると、ある意味当たり前の結果かもしれない。
<貯蓄しない若者、度が過ぎる教育費支出>
若い層は最近貯蓄をしなくなっている。過去には若いときに将来家を購入するために、または老後に備えて貯蓄することが一般的であったが、今の若者は貯蓄よりも海外旅行、外車、ブランド品の購入などが優先される。
世界で1番高い高級乳母車が1番売れている国は韓国であるという。1台も170万ウォンもする高価なものであるが、飛ぶように売れていることだ。
子どもの教育費の支出も度を過ぎている。親は、子どものときから自分の子どもにいろいろなことを学ばせようとしている。中学、高校時代には塾通いなどでその費用は家計を圧迫している。しかし、よそも全部やっているので自分だけがやめるわけにはいかない。大学進学率は世界最高水準であるが、大学卒に用意された就職口は限られている。親は子どもの大学の授業料を払うだけでも大変だったのに、子どもが大学を卒業しても就職口が見つからないので、収入はなく支出だけが続く羽目になる。場合によっては子どもの住居費なども馬鹿にならない。
<貧しいなかでの高齢化>
1970年代は、平均寿命が60歳だったので、親を扶養する負担もそれほど重くなかったが、今は、寿命が延びて扶養期間が長くなったので、その分、親への負担が増加して貯蓄に回す余裕などないのが現状である。
このような状況なので韓国の貯蓄率は先進国に比較するととても低い水準である。80年代と90年代は20%台であったが、2011年度になってからは2.7%まで落ちていて、その後回復の兆しがない。貯蓄率が大幅に下落したきっかけは、IMF管理下に入る時期だが、その後戻らないまま、低い貯蓄率が続いている。10%を上回っているフランス、ドイツ、5%台であるアメリカなどに比べても、韓国の貯蓄率がいかに低いかがよくわかる。
韓国は、老人になってから貧困になる可能性が高いことを示唆している。
韓国経済の今後のことを考えると、悲観的な要素が多い。2012年度には若い人7人が1人の老人を扶養しなければならないが、15年後である27年度には若い人3人が1人の老人を扶養しなければならない社会が到来する。
老人が増えていくということは、福祉への支出が増加することを意味し、それは国の財政への圧迫につながる。しかし、政府としては負債を増やしてでも福祉政策を採らないといけないが、それも体力がある限りでの話である。
経済学者が、経済指標のなかで1つだけを選ぶとしたら、「人口統計を選ぶ」と言うほど、人口が経済に与える影響は深刻なものである。
今後、韓国も日本も、未踏の領域に入ることになるので、今までのような生活パターンではなく、質素な生活パターンに切り替えることによって未来に備えるべきであろう。
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