初夏の博多を彩る風物詩のひとつ「6月博多座大歌舞伎船乗り込み」が5月29日、船乗り込み実行委員会の主催で行なわれた。6月2日から26日まで行なわれる「6月博多座大歌舞伎」へ出演する歌舞伎役者、人間国宝、坂田藤十郎丈ほか12名が福岡市の行政、経済、商工関係者や一般市民らと共に乗船し、キャナルシティ博多横の水流公園から博多リバレインまでの約800メートルを賑やかに下った。
乗船式典は、キャナルシティ博多地下1階のサンプラザステージで行なわれた。その後、清流公園から乗船し、川端ぜんざい広場前で一座の宮脇信治頭取が口上を行なったのち、那珂川沿いに建つ鏡天満宮に参拝。最後に博多リバレインフェスタスクエアで、役者ひとりひとりが6月大歌舞伎に向けての意気込みなどを込めた挨拶を行なった。
口上は、式典もあわせ計3回行なわれ、宮脇頭取は6月大歌舞伎の演目名「双蝶々曲輪日記角力場」「三人形」「雁のたより」(以上、昼の部)、「恩讐の彼方に」「船弁慶」「湧昇水鯉滝 鯉つかみ」(以上、夜の部)と登場人物、出演役者名を朗々と紹介した。
どの会場でも観客が鈴なりで、あちらこちらから屋号や役者名を呼びかける威勢の良い掛け声が上がった。
船乗り込みは、歌舞伎興行の際、役者が「ご当地到着」を船に乗ってお披露目する歌舞伎独特の伝統行事だが、現在では大阪と福岡でしか行なわれていない。福岡では、博多座が1999年に開場して以来、「船乗り込みを博多の新しい名物に」という福岡市民の熱い思いのもと、毎年行なわれてきた。地元住民たちと歌舞伎役者たちの念願が叶い、今や博多の初夏を彩る風物詩となっている。
坂田藤十郎丈は式典に集まった人々を見渡し「博多座に来ると、歌舞伎役者をしていて良かったなぁと思う」と力強く挨拶。観衆から喝采を浴びた。また中村翫雀丈は、父、藤十郎丈とともに15年前の博多座こけら落としに参加した当時の情景を思い出し、「15年の間に博多は随分変わったが、一番大きく変わったのはこの船乗り込みにこのようにたくさんの人々が集まってくださるようになったことだ」と、船乗り込みという伝統文化が多くの人々に守られて継承されたことを感慨深く語った。
<乗船者について> ※福岡市関係者は、1~6号船に分乗
1号船、宮脇信治頭取ほか/2号船、坂田藤十郎丈、中村梅玉丈/3号船 中村魁春丈、中村東蔵丈/4号線 中村翫雀丈、市川染五郎丈、片岡愛之助丈/5号船 中村松江丈、中村壱太郎丈、大谷廣太郎丈/6号船 上村吉弥丈、澤村宗之助丈、嵐橘三郎丈/7号船~10号船 福岡親善大使、一般市民、鳴物ほか約100名乗船
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