5.配当状況について
アベノミクスの追い風を受けて、好業績を背景に増配または復配する企業が増加している。前3月期に決算を迎えた東証1部上場企業(電力除く)の配当総額は、リーマン・ショック前の2008年3月期に記録した6兆1,600億円を上回り、6兆9,000億円と過去となると見られている。
九州・山口・広島22行の地銀も、当期純益が最高益となった銀行も多く、半数が増配に踏み切ることになった。
◆上記表から見えるもの
(1)増配を実施するのは、ふくおかFGと広島銀行の2行が2円の増配。山口FG、十八銀行、佐賀銀行、西日本シティ銀行、西京銀行の5行が1円の増配。肥後銀行、南日本銀行の2行が50銭を増配する。18のFG・銀行のうち、半数の9銀行・FGが増配を実施することになる。
(2)一株当たりの年間配当金が高いのは、山口FGの13円、ふくおかFGの12円、肥後銀行の9円50銭、鹿児島銀行の9円、広島銀行の8円となっている。次に続くのが十八銀行、宮崎銀行、佐賀銀行の3行が7円。西日本シティ銀行、大分銀行、西京銀行、佐賀共栄銀行の4行が6円で、南日本銀行が5円50銭。筑邦銀行、南日本銀行、福岡中央銀行の4行が5円となっている。
(3)前期と同額の年間配当を実施するのは鹿児島銀行、宮崎銀行、佐賀共栄銀行、宮崎太陽銀行、福岡中央銀行、豊和銀行の6行で、減配は大分銀行と筑邦銀行の2行。無配継続は長崎銀行の1行となっている。
(4)この表のなかで目につくのは佐賀共栄銀行で、当期純利益410百万円のうちの32%に当たる131百万円を配当金としていることだ。さらに15年3月期の当期純利益(予想)が210百万円に対し、6円配当を予想しており、その配当性向は62.6%となる。当期純利益の6割が配当金として社外流出する計算となる。大蔵省出身の二宮洋二新頭取のかじ取りが問われることになりそうだ。
◆今後の見通しについて
今期(15年3月期)については、先行きの景気が不透明なこともあり、増配予想しているのは山口FGと肥後銀行の2行(FG)のみで、ふくおかFGなど5行(FG)が減配予想となっている。残り11行(含む無配継続の長崎銀行)は据え置きを予想している。
今回福岡FGが2円増配し12円配当を実施することになったが、その配当金総額は103億円(前期比17億円増)となっている。配当性向は佐賀共栄銀行の32.0%に次ぐ28.7%と高い比率になっている。15年3月期の配当予想は1円減額した11円を予定しているが配当性向は28.9%と高い予想となっており、6月に就任予定の柴戸隆成新社長の経営手腕が問われることになる。
いずれにせよ、増配によって配当金は増えるものの、NISA以外では配当金の軽減税率(10%)が廃止され、20%(所得税15%、住民税5%)の税率となるため、恩恵を受けるのはごく一部の個人投資家となりそうだ。
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