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残業代ゼロへ、産業競争力会議(後) 
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2014年5月30日 07:00

<雇用ルール改革には、公労使の議論が必要>
 成果で評価される新しい労働時間制度の対象者が本当に限定的で済むのかどうか、占う記述が民間議員の案にある。そのなかで参考として掲げているのは、裁量労働制が適用されている労働者の割合が、企画型業務型で0.3%、専門業務型で1.2%、給与所得者の内1,000万円以上の3.8%にとどまっていることだ。
 現在の裁量労働制が、経営側には使い勝手が悪く、活用されていないということだろう。そこからは、「残業代支払いを免れたい」という意図が見える。そういう経済界の思惑だけで雇用のルールを改革するのは、困難だ。

 そもそも、雇用のルールについては、公労使の3者が議論するのが重要である。労働規制緩和をめぐって戦略特区会議が議論した際にも、問題になった。「雇用ルールは、条約上、労使間で協議することが求められており、労政審での審議を経ることが必須」と厚労省が主張したのに対し、同ワーキンググループの八田達夫座長は「労政審である必要はなく、別の場を設けて迅速に協議しても構わないはず」と迫った。

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▲新たな労働時間制度の厚労省案と民間議員案

<労使紛争の火種、将来に禍根>
srm.jpg 民間議員案は「自己裁量により時間をコントロール。効率的に働けば短時間労働でも報酬は確保」と、労働者側のメリットを強調する。
 しかし、長時間労働の是正には、週40時間の労働時間規制の強化が効果的だし、裁量労働については、現在ある裁量労働制の活用・改善など、新しい労働時間制度を導入しなくても、対応策は可能だ。また、成果連動型の働き方を促進するなら、評価・処遇・賃金制度によって、労働者のモラルを向上させ企業の業績につなげていくのが本筋である。

 これらの議論を飛び越して、「新しい労働時間制度」の議論が進んでいる。雇用のルールを変えるにあたって、「岩盤規制」ととらえている安倍首相と民間議員は安易に議論を進め過ぎている。
 米国では、「ホワイトカラー・エグゼンプション」(残業代支払い適用除外制度)について、高収入者を対象として始まった制度にもかかわらず、何百万人もの低賃金労働者が対象になっているとして、オバマ大統領が残業代の保護を受けられるように見直す指示を出した。
 名ばかり管理職、偽装請負などなど、「コスト削減」が先走って導入しても、労使紛争の挙句、経営側は逆に痛手を受けてきた。「だからこそ、岩盤規制打破」と言うかもしれないが、逆に、将来新たな労使紛争が必至の制度とみるべきだ。
 性急な導入は、労働者だけではなく、経営者にとっても、企業の発展にとっても禍根を残す。

(了)
【山本 弘之】

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