<チャイナ・プラスワン成功の鍵を握る雲南省>
――3月に中国雲南省・昆明等に行き、現地の大学等で講演をなさったと聞いています。その目的は何ですか。
藤原 私は雲南省が今までお話してきたことの解決の1つの鍵を握るのではないかと注目しています。日本企業が「チャイナ・プラスワン」を考える際に、その最前線基地に成り得るのではないかと考えるわけです。そうなれば、中国進出の成果と「チャイナ・プラスワン」がシームレスにつながってきます。
<2012年に開港した、中国第4位のハブ空港>
――そもそも、雲南省とはどういうところですか。
藤原 雲南省は中国の西南部に位置し、東は広西チワン族自治区、貴州省、北は四川省、チベット自治区、西はミャンマー、南はラオス、ベトナムと国境を接しています。プーアール茶の生産地と知られ、多くの世界遺産も有しています。国土は日本とほぼ同じ面積で、そこに約4,600万人、25の少数民族がそれぞれの文化や生活習慣を保持しながら暮らしています。気候は温暖で、年間を通して15度平均です。
最近は中国政府が「西南開放政策の橋頭堡」と位置付け積極的に開発が進んでいます。中国の広西チワン族自治区、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマーと一緒に、メコン広域経済圏(GMS)を形成、"東南・南アジアへのゲートウェイ"として、その存在が高まりつつあります。
インフラ設備も着々と進み、鉄道、高速道路網が拡大されています。2012年に開港した昆明長水国際空港は、北京首都国際空港、上海浦東国際空港、広州白雲国際空港と並び、中国で4番目のハブ空港(年間3,500万人が利用)として位置付けられ、主に西方への国際便の就航に力を入れています。
<消費レベルは高く、可処分所得は2万1,000元>
中国の南西の外れにありながら、消費レベルは極めて高く、1人当たりの平均可処分所得は2万1,000元を超え、東北の吉林省や中部の江西省と同じレベルになっています。平均自家用車保有量も省ごとのランキングでは、北京、広東、浙江に次ぐ第4位です。
省都の昆明には、超巨大なショッピングセンターがあり、高級品も売れています。このショッピングセンターの特徴は、中国の近隣省に限らず、国を跨いで、ミャンマー、ラオス、ベトナムから多くの買い物客が来ることです。現在、昆明にはフランスのカルフール(お客さんが溢れていました)、日本の無印良品、スターバックス、スウェーデンのH&Mなどが進出しています。
雲南省の代表的な5つの基幹産業は以下の通りです。
1.鉱物:ダイヤモンド、亜鉛、すずの埋蔵量が中国第1位で、「有色金属王国」と言われています。2.電力:水力エネルギー資源は2位 豊富な水資源を有し、水力発電が盛んです。3.バイオ:茶葉、花卉等の作付面積は1位、胡桃、食用キノコ、薬草の生産量も全国1位です。4.タバコ:タバコの葉の作付面積、輸出量1位、中国のタバコの30%を生産しています。5.観光:旅行者数(国内・外で合計)は約1億7,000万人、旅行収入は約1,300億元になっています。
<人件費、人材定着率、安定電力供給で優位性>
生産拠点として見た場合は3つの優位性があります。
1つは人件費が安いこと。平均賃金は広東省の約7割、大卒で2,000元から2,500元、高卒で1,500元~1,700元です。
2つ目は、人材定着率が高いこと。昆明の若者は、地元指向が強く、雲南大学、雲南師範大学では優秀な日本語のできる学生が毎年約300人卒業します。
そして3つ目は安定した電力供給です。水力発電が盛んで、さらに、ミャンマーとの天然ガスパイプラインが、全長2,500kmで2013年に全面開通しました。
<日本人のルーツと雲南省・貴州省のミャオ族>
――雲南省の住民は性格が穏やかで、親日的とも聞いています。何か理由があるのですか。
藤原 たしかに、昆明の日系企業では組合はありますが、労災対策に限られ、ストライキ等は起こっていません。
関係あるかどうかはわかりませんが、ルーツをたどると面白い話があります。多くの文献で、日本の縄文時代に、中国から日本への移民の多くは、雲南省からと言われております。その根拠として、雲南省や貴州省に、今でも多く住むミャオ族(苗族)のDNA、歯形、骨格が極めて日本人に似ているそうです。雲南省では、納豆など、大豆の発酵食品も多く、床に座って食事をする習慣もあります。さらに、彼らの伝統的な歌は日本の民謡に似ているという話もあります。
<プロフィール>
藤原弘氏(ふじわら・ひろし)
1947年広島県因島市生まれ。70年関西大学法学部卒業後、日本貿易振興会(ジェトロ)入会。ロンドンに4年、香港に5年(香港センター次長)、大連に1年(事務所長)の海外駐在を経験。ジェトロ時代は中国、東南アジアの奥地まで足を運ぶ熱血の調査マン。
東京中小企業投資育成(株)国際ビジネスセンター所長を経て、09年NPO法人アジアITビジネス研究会理事長に就任。認定NPO雲南聯誼協会経営企画室長他を兼任している。
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