<日本とは違う仕組み(OS)の上で動いている>
――中国・雲南省と「チャイナ・プラスワン」について色々とお話を聞いてきました。今回は、東京中小企業投資育成(株)国際ビジネスセンター所長のご経験から、アジアにおける中小企業の海外進出全般についてアドバイスをいただけますか。
藤原 中国も東南アジアも日本とは違う仕組み(OS)の上で動いていると認識していただくことがとても大事です。タイの政変などどんなことが起こるかわかりません。そのリスクを覚悟で進出すことが必要です。先にお話しした、台湾企業のトップは、台湾を出る時、家財道具一式を売り払って来ていました。いわば、"後がない"状態ですが、だからこそ大きな成功を収めることができたのだと思います。
その覚悟なしに、中国で人件費が上がったからとか、市場が大きそうだからとか、親会社が出て行ったので仕方なくとか、「チャイナ・プラスワン」ブームだから乗り遅れないようにとか、そのような気持ちだけで出て行っても成功は難しいと思います。
<しっかり調査・分析して、合理的に判断する>
しかし、その現実が認識できさえすれば、成功するためのパターンは、一様でなく色々な形があると思います。
敢えて、面白い例を2つ挙げましょう。1つ目は、台湾生まれで日本に帰化した、電子部品メーカーの経営者の話です。彼は、中国では自社工場を持っていません。上海にある約40社の中国企業と契約、委託生産させています。製品は、台湾の自社工場で最終チェックを行ない、中国市場でなく、アジアや欧米市場向けに販売しています。台湾人だからかも知れませんが、うまく中国人と呼吸を合わせ、事業を成功に導いていると言えます。
2つ目はまったくやり方が違います。スイスのトップブランド事務用品会社の中国戦略は変わっています。ものはすべて自国のスイスで作り、空輸して、中国沿海部の大都市で主に富裕層を対象にビジネスを展開しています。市場になりそうな沿海部以外の大都市は国内にたくさんありますが、出て行こうとはしません。この会社は、日本でも、頑なに、大手百貨店のみと取引を行っています。
どちらも、とても深く中国と関わり、成功していますが、まったくやり方は違います。中国におけるカントリーリスクは昔から変わっていません。全体的な市場やインフラ整備の進捗、自社の事業モデルをしっかり調査・分析し、漠然としたイメージに頼らず、合理的に判断していくことが重要ということになります。これから進出する、日本の中小企業の皆さんは中国に限らず、自社にあった戦略をとることが大切と言えます。
<雲南省に中小企業支援センターを作りたい>
――最後に、理事長の今後の活動の焦点についてお話下さい。
藤原 私の活動の1つに雲南聯誼協会の経営企画室長というのがあります。この仕事の目指すところは本日の話にとても深く関わっています。私は今、雲南省に中小企業支援センターを作るように、中国、日本に働きかけています。
それは、地方政府との交渉、人材の獲得についても、中小企業が1社だけで独自にやっていてはなかなかうまくいかないからです。次回雲南省に行く時は、この話を進捗させ、さらに雲南省からメコン広域経済圏(GMS)まで南下し、日本企業にどんなビジネスチャンスが考えられるかを探りたいと思っております。
――本日はありがとうございました。
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<プロフィール>
藤原弘氏(ふじわら・ひろし)
1947年広島県因島市生まれ。70年関西大学法学部卒業後、日本貿易振興会(ジェトロ)入会。ロンドンに4年、香港に5年(香港センター次長)、大連に1年(事務所長)の海外駐在を経験。ジェトロ時代は中国、東南アジアの奥地まで足を運ぶ熱血の調査マン。
東京中小企業投資育成(株)国際ビジネスセンター所長を経て、09年NPO法人アジアITビジネス研究会理事長に就任。認定NPO雲南聯誼協会経営企画室長他を兼任している。
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