平昌(ピョンチャン)での冬季五輪を3年半後に控える韓国だが、スポーツ界では深刻な「空洞化」が起きているという。「冬季五輪の開催にむけて準備は進むものの、気運が上がってこない。やはりキム・ヨナ選手の引退は大きく、その穴を埋める存在がいない」と日本在住の韓国人事情通は言う。
フィギュアスケート、キム・ヨナ選手の韓国における存在感は絶大だったが、ソチ五輪出場後に引退。日本では、浅田真央選手以外にも羽生結弦選手ら、男女で後継の選手がいるが、韓国ではキム・ヨナ選手を除けば、10位圏内に入るか否かの選手がわずかにいる程度。「日本よりも練習環境は少なく、韓国のフィギュアスケートで国際大会出場レベルの選手を子どもの頃から育てていくには、数千万円はかかる。金銭のみならず親や家族の時間まで奪われる。さらに、そこまでしても五輪でメダルが取れるという保証もなく『子どもをフィギュアの選手にしたい』と考える親は少ない」と韓国人事情通は指摘する。
それでも、キム・ヨナ選手の人気に影響を受け、幼少の頃にフィギュアスケートを仕込まれ始めた子どもたちも、現在10代前半から中盤を迎える。「キム・ヨナ・キッズ」と呼ばれる世代の選手が多少存在するという。しかし、世界でトップを狙えるほどの経験、実績には届いておらず、「キム・ヨナ選手自身」から「キム・ヨナ・キッズの到来」までには時間的な隔たりも存在するそうだ。
キム・ヨナ選手自身の人気は依然として高く、引退後も牛乳、パン、靴、ジュエリーなど様々な業界のテレビCMに出演していて、画面露出度も高い。1本当たりのギャラは役者やタレント以上の破格値とも言われている。さらには、韓国の名門・高麗大学大学院への進学を予定するなど「スポーツでも実績を残し、まじめに学業にも取り組む」と、良いお手本として老若男女問わずの好感度を得ている。キム・ヨナさんは、今後もオリンピック委員、スポーツ協会の理事等の様々なポジションを得ると見られているが、在籍したフィギュア界は、当面の間「空洞化」が続くと予想されているのだ。
一方で、定番の人気があった野球やサッカーも厳しい状況だ。特に野球は国内リーグの人気が衰退し、注目は、米レンジャーズで活躍する釜山出身のチュシンス選手へと移った。「もともと日本人のように娯楽として『スポーツを見る』という文化が定着しているわけでもない。釜山は歴史的にスポーツ観戦志向が強い傾向にあるが、他の地域はそうでもない。映画や音楽などへの関心が潜在的に高く、スポーツ文化は衰退する可能性もある。キム・ヨナ選手が引退してしまった以上、韓国でメダルが狙えそうなのは、ショートトラック、スピードスケートぐらいの競技しかなく、平昌五輪開催主催側は、注目ポイントをどこに持っていくか苦慮している」そうだ。
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