<「顧客管理」から生まれた「住宅カルテ」>
新規顧客が増えるなかで、課題となったのは顧客管理だ。従来はアナログ方式で管理できていたが、顧客の増加に対応できず、管理業務のクオリティが低下した。やっている「つもり」から徹底した顧客満足のサービスへ転換しようと、従来顧客の担当者が当たっていたアフターサポートを、專門の部門を配備することで一括管理。同社においては、施工クレームはほぼないが、何も問題がなくともお客さまは「電話1本あれば安心する」という。対人関係で事業を展開しているからこそ、お客さまとの関係性づくりが何より重要なのだ。
そして現在、正式リリースに向けて尽力しているのが、住宅の健康状態などを一括で見ることのできるネットシステム。具体的には、顧客ごとにID・パスワードを設定し、いつ・どのような工事(リフォームなど)を行なったかという、いわば「住宅のカルテ」。住宅の評価については、長期優良住宅や低炭素建築物認定などさまざまな制度があるが、同社はあくまですでに建設されている住宅を対象とした販売・施工が中心。そこで考えたのが、既存住宅への投資が期間や金額も合わせて把握できる、住宅を評価する際の材料として使えるシステムの構築である。
一般的に、木造戸建住宅は20年も経てば、価値を失ってしまう。ただ、たとえばそれまでに施工したリフォームの履歴があれば、売買などの際に好材料となるのではないか。実績はまだないものの、「弊社のような地元企業が、住宅の評価制度に変化をもたらすことができれば」と、笠社長は期待を寄せる。
もちろん、資産価値を向上させる同社の取り組みが具現化されれば、お客さまからの信頼もより厚みを増すこととなるのは間違いない。長期的な付き合いから、顧客離れを予防する手段にもなり得るだろう。
<挑戦し続ける地元企業のフットプリント>
地域に根づいた企業として、BtoC事業でその名前と信頼というかたちで浸透させた同社。次の展開は、BtoCでの実績を活かしたBtoB事業の強化である。
具体的には、事業主体としてメガソーラー事業を視野に入れている。住宅を対象とした太陽光発電事業も、最初から軌道に乗ったわけではない。地道な地域戦略のもと、補助金制度など国の政策を始めとした業界の変化をうまく取り入れることで、販売・施工する自社とお客さまの双方にメリットが感じられる事業環境を形成した。従来通り、地元の1人ひとり、一軒一軒を対象とした営業も続けていくが、これまでの技術・販売力をさらなる展望への原動力とする。
防水工事業から、大きな変化を遂げてきた同社だが、牽引する笠社長の信念は揺るぎない。
「人の幸せを願うことで、自分の幸せが付いてくる」ことが、同社の展開する事業というかたちになって現れている。そうして返ってきた幸せが、笠社長の名刺にも刻まれた「縁」として地域・そして企業と同社をつないできた。
それが、何よりの自社が歩んできた証であり、今後もその足跡を地域へと刻んでいくに違いない。
≪ (前) |
<COMPANY INFORMATION>
代 表:笠 俊治
所在地:福岡県糸島市前原東1-6-3 双栄ビル1F
設 立:2002年5月
資本金:1,000万円
TEL:092-332-1231
URL:http://www.q-j-k.co.jp/
<PROFILE>
笠 俊治(りゅう・しゅんじ)
1972年生まれ。西福岡高等学校(現・福岡講倫館高等学校)中退後、防水工事会社で技術者として従事。2002年に独立し、07年に(株)九州住建へ商号変更している。
※記事へのご意見はこちら