中国の国営放送・中国中央電視台(CCTV)で、毎日夕方6時35分から放送されている「天天飲食」は、日本で言うなら「きょうの料理」や「3分クッキング」に似た真面目な料理番組だ。シンプルな中国家庭料理を一流シェフが出てきて、司会者に伝授しながら作る。流れは日本の番組と似ているのだが、日本の番組と根本的に違うのは「司会者が結構、毒舌」という点だ。
司会者は男性、女性の日替わりで、隣で料理研究家が「解説」を加えることもある。特に男性・陳志峰氏が司会を務める時は、本人はおそらく悪気無く発しているのだろうと思われる、個性溢れる「毒舌トーク」から目が離せない。
ある回では、でんぷんを使った麺のような食材「凉粉(リャンフェン)」を使った料理をシェフとともに紹介。料理を作り始めるシェフを尻目に、陳氏は「私は、凉粉は好きではない。街角の屋台の凉粉は何を混ぜ込んでいるかわからない」と言い放った。タケノコの水煮缶を使った別の回の放送では「タケノコの缶詰はすっぱくて渋い。航海や登山の『どうしても缶詰しかない時』以外は食べる必要は無い」とコメント。日本であれば「凉粉業界」や「タケノコ缶詰業界」からクレームがくることを予想し、こういうことは言わないだろう。
また、男性・陳氏のみならず、女性司会者の王雪純氏も「普段はこの料理はあまり食べない」「この料理は私はとても好き」などと、国営放送のアナウンサーの立場にも関わらず、自分の味の好き嫌いをはっきりと言うのがおもしろい。
料理完成後の試食の際には「美味しい」「味わい深い」などと和気あいあいとコメントして帳尻は合ってくる。それでも、また最後に「美味しいけどこの料理はカロリーが非常に高いので、食べ過ぎに注意」「この料理には野菜が入っていないので、別のおかずで野菜を摂りましょう」などと、日本の番組では、あり得ない、番組に水を差すような忠告をして終わっていくのである。
悪気はなく、ブラックジョークでもなく、中国国営放送の番組の中でさらりと言うのは、そういう言い回しが中国の「スタンダード」な物の言い方でもあるからだ。日本とは番組の大まかな流れは似ているものの、中国では司会者のトークにおける個性の出し方が日本とは異なってくるのが見どころの一つとも言える。
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